先日、新年のご挨拶をしたばかりのような気がするのだけれど、あっという間に8月である。
毎年思うことが一緒なら、もう一層のこと、時間など無くしてしまえば良いのにと、妙なことを口走りそうになる私をよそに、壁掛け時計の秒針はカチリ、カチリと乾いた音を立てながら時を刻んでいた。
一瞬、焦りを感じてしまいそうにもなるのだけれど、焦ったところで何も変わらない。
深呼吸をして、目の前のことから一つずつ。
そう思い、手始めに、空になっているグラスに飲み物を継ぎ足すべく席を立った。
本日8月1日は八朔(はっさく)の日である。
八朔(はっさく)の「八」は8月を指し、「朔(さく)」は月の第一日目のことを指す。
正確には、旧暦の8月の第一日目のことなので、今年は8月30日が八朔の日なのだけれど、旧暦は新月から約ひと月ほどのずれがあってピンとこないため、今回は、新暦の8月1日に八朔の日を感じてみようかと。
ご興味ありましたら、ちらりとのぞいていってくださいませ。
旧暦の8月1日頃というのは稲穂が実り始める頃ですが、この時季の農作物は、台風被害をはじめとする自然による被害を受けることも多くなるので、本格的な収穫期の前に、豊作祈願として「田の実の節句(たのみのせっく)」と呼ばれる行事が行われていたといいます。
そして、農家では八朔の日に、実りはじめた農作物をひと足先に収穫し、日頃お世話になっている方々や大切な方々へ贈る風習があったのだとか。
これは、「田の実の節句(たのみのせっく)」の「田の実」が「頼み」に転じ、日頃の感謝の気持ちを贈り物と一緒に贈ることで、何かあったときにはお互いに気持ちよく助け合うことができる関係を築く意味もあったのだそう。
この農家で始まった風習は、少しずつ武家社会や各地でも取り入れられるようになったといいます。
更に江戸時代、徳川家康が江戸城に入城した日が八朔の日だったことから、八朔の日には、大名たちが徳川将軍に祝辞を述べる重要な日となったことも重なり、
八朔の日は、一年の中にいくつかある節目の日のひとつとして定着したようです。
時代の流れもあり、様々なものが簡素化されていく傾向にあるのですが、
何か起きた時にだけ頼みごとをするというのは、頼む側も頼まれる側も、何だか心苦しいやら、胸の奥がざわつくやらと心穏やかに居られないことも。
繋がりのカタチや関わり方も多様化しておりますが、このような日をきっかけにして、日頃の感謝を伝えておくのも、心穏やかに暮らす知恵のひとつなのかもしれません。
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