小さな女の子が父親に手をひかれ目の前を歩いていた。
夏らしい真っ白なワンピースをまとっており、右手には、いや、右腕には真っ赤なイチゴ味であろうかき氷が抱えられていた。
大事なそれを落とさぬように何度も視線を向けながら小脇に抱え込む姿が可愛らしくて、つい歩くペースを落としてしまった。
小さな信号に差し掛かり、その親子の後ろで立っていたのだけれど、暑さがそうさせたのか、信号待ちがそうさせたのか、女の子はかき氷を右手に掴み直そうとしていた。
片手では持つことが難しい大きさのカップだったけれど、左手は父親と繋がれており、使えるのは右手のみ。
小さな頭でそう考えたのかもしれない。
父親はその様子に気付かぬまま、横断歩道の向こう側にある信号を眺めているように見えた。
目が離せなくなった可愛い光景はいつの間にか、薄っすらと嫌な予感が漂う危うい光景として私の目に映っていた。
信号機が青になった瞬間だった。
グイッと手を引いた父親の力に引っ張られるようにして一歩を踏み出した女の子は、右手のみで持とうとしていた真っ赤なかき氷を豪快にぶちまけた。
目の前の出来事がスローモーションで流れるような感覚を覚えた後、女の子が大きな声で泣き出し、その声に父親が分かり易く慌てたものだから、
本人たちには申し訳ないのだけれど、なんと微笑ましい光景だろうかと思いながら2人を追い抜くようにして横断歩道を渡った。
通り過ぎる傍らチラリと視線を向けると、女の子の真っ白なワンピースは真っ赤に染まっていた。
大人でも、うっかりかき氷をこぼし、かき氷のシロップで衣類の一部やハンカチなどを汚してしまうことがあるけれど、かき氷のシロップに使われている着色料は落ちにくいため、注意が必要である。
万が一、汚れてしまっても慌てて擦ったり、すぐに洗濯機へ放り込んでしまってはいけない。
まずは、慌てずに水がある場所を探し、水で洗い流すことができれば応急処置完了である。
この後は、幸せのレシピ集で度々登場する食器洗い専用洗剤を指先に少量取り、それを少量の水で薄めるようにして指先で混ぜ合わせたものをシロップが付いた部分に塗り広げ、
生地が毛羽立たないように注意をしながら生地を軽く擦り着色料を落とすのだ。
ここでほとんど落ちていれば、その後は、衣類に適したお洗濯をすれば落ちることが多いのだけれど、落ちていない場合は、
ぬるま湯を張った洗面器などに、液体タイプと粉末タイプのワイドハイターを両方投入し半日から1日漬け込んだあと、通常のお洗濯をすれば落ちることが多いように思う。
巷では、酵素系漂白剤やセスキ炭酸ソーダ、更にクエン酸を使った着色料落としを多数、目にするのだけれど、私には工程が多いため専ら、この方法である。
それでも今の所、常に常備していて使用用途が幅広い食器洗い専用洗剤と液体タイプと粉末タイプのワイドハイターで事足りているので、この方法もおすすめだ。
ワンピースを真っ赤に染めた状態で帰宅する女の子と父親のその後を軽く想像し、
どのような展開が待ち受けていたとしても、とある家族の夏の想い出のひとつになるのだろうと思った、暑い夏の日の風景である。
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