幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

「ベッドで朝食を」の裏にあるパンくずの最期。

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古い洋画をちらちらと眺めたり、台詞を拾い聴きしたりしながら資料を整理していたときのことだ。

ふと、顔を上げると貴族女性がベッドの上で朝食を取っている画が映し出されていた。

ワタクシ、このようなシチュエーションは英国貴族のものだと思っていたのだけれど、英国暮らしを初めて数か月ほど経った頃だっただろうか。

今でも「世の奥様方の全員が」とまではいかないまでも、ある程度の数の奥様たちはベッドの上で朝食を取っている現実があると知り、目を丸くしたことがあった。

もちろん毎日という訳ではなく、週末や誕生日、何かスペシャルなことがあったとき等、それが行われる日や頻度はご家庭によって異なるけれど、

英国には、夫が妻のために朝食を作り、その朝食をベッドで寛いでいる妻へ持って行くという風習があるのだ。

気になる朝食の内容は、毎回映画のようにとはいかないようで、紅茶だけ、紅茶とトースト、そこに目玉焼きやサラダが付いていたり、パンケーキやヨーグルト、中には庭から切り取ってきた花が添えられていることがあったりと、人によって多少異なるという。

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いつの時代のことだったか、詳細は記憶から薄れてしまったけれど、ある時代にあった、寝起きにベッドで紅茶を飲む風習から始まったのだとか。

この時代は、各家庭にお手伝いさんが居たこともあり、その家の主夫婦にお茶を出すのはお手伝いさんの役目だったそうだ。

しかし、これがいつの間にか夫は妻のために朝食をつくり、その朝食を妻が待つベッドへ運ぶという風習として定着したのである。

そうそう、ある日、友人と立ち寄った雑貨店で、素敵な装飾が施された小さなテーブルを見つけたことがあった。

それは、日本であれば、おままごとに使ったり、観葉植物を置く台として使ってもいいのではないだろうかと思うようなサイズ感のテーブルだった。

当時の私は、見たまま、感じたままのことを友人に伝えたのだけれど、これはベッドで朝食を食べるときに使うテーブルで、観葉植物を置いたり、子どもが玩具として使っていいテーブルではないと言われ、「あの風習は真実なのだ」と改めて胸に刻む瞬間となった。

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その風習は、とても優雅な雰囲気で、想像した回数は一度や二度ではないけれど、毎回、想像してすぐに私は日本人だと思い知るのである。

私だって英国女性と同じく、ベッドの中でゆっくりと寛ぐ時間は大好きなのだけれど、そこで、カリッと焼き色をつけたトーストなどを口にすれば、どんなにお行儀よくパンを口に入れたとしても、パンのくずはポロポロと辺りに飛び散るに違いない。

それを片付けるのは誰なのだろうか?

何だかとても面倒で、優雅な雰囲気も一瞬にして覚めてしまうように思うのだ。

じゃぁ、お手伝いさんが居たとして、全ての面倒を引き受けてくれるとしたらどうだろうか。

そう思ったことも一度や二度ではないのだけれど、それもそれでちょっと煩わしい……なんて思ったりもして。

どちらにしても私の場合は、そのようなイベントが日常化し、毎週末の寝起きに待ち構えていたとしたら、寛げないじゃない!と、その小さなテーブルをひっくり返したくなるのではないだろうか。

英国の優雅さには日本のそれとは異なる大らかさが必要なのかもしれない。

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古い映画を眺めつつ、そのようなことを思っていたのだけれど「食後のベッドに散らばっているであろうパンくずを片付けるのは誰のお役目なのか?」調査せずに帰国し、長い年月が経っていることに気が付いた。

パンくずの最期の件、そのうち調査してみようかと思った午後である。

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