先日、日本の伝統色で構成された色鉛筆があることを知った。
色鉛筆を仕事道具のひとつとして使用している私は、それがどのような色彩のものなのか気になり、販売元のサイトをのぞいた。
平安時代や安土桃山時代、江戸時代に使われていた色でまとめられていたのだけれど、大人が愛でて楽しむことができるような、素敵な色鉛筆だった。
好きな着物の色使いを見ると、自分がどの時代の色に惹かれる傾向にあるのか垣間見ることができるけれど、雰囲気は違えども、日本の伝統色は繊細かつシックでとてもカッコいい、と私個人は思っている。
そして今回目にした、この雅な雰囲気をまとった色鉛筆は、木工芸職人の手によって生み出された白木製のシンプルな木箱に収められていた。
一見、どこにでもよくある四角い木箱のように見えたけれど、よく見れば繊細なカーブやソリを施された面があったり、角が程よく削り取られていたりと、丁寧な職人技が集結した木箱だった。
色鉛筆以上の諸々が合わさった美術品のような色鉛筆は、お値段も私が知る色鉛筆のお値段ではなかったけれど、
日本の伝統色と現代の技術が合わさってできた色鉛筆に、日本が誇れる職人技術とセンスが詰め込まれた色鉛筆ケース、そこに伝統色の色名の由来が書かれた説明書がついており、まさに大人のための色鉛筆だった。
この色鉛筆のように、物本来の用途に様々な付加価値がついた商品を目にする機会があるけれど、それを手にとった人は実際にそれを使うのだろうか、それとも飾っておくのだろうか。
はたまた、大切に保存しておいて、時々、保存場所から取り出して愛でるのだろうか……と思うことがある。
少し前にも、世界レベルのオークションで日本のウイスキーに驚くほどの高値が付いたと話題になっていた。
日本のウイスキーを高値で落札した方は、ウイスキーのコレクターかウイスキー投資を行っている方だろうと思うのだけれど、
この件に対してマスコミからコメントを求められたウイスキーの作り手の方は、ウイスキーを飲んでいただけるのかどうか、その点が気になっていると困惑気味な声色で答えていたのが印象的だった。
物に対して、大切に残しておきたいという気持ちと、物は使ってあげてこそ生きるという両方の気持ちに挟まれることがあるけれど、素敵な色鉛筆を画面越しに眺めながら、自分だったら、これを飾るだろうか、使うだろうかと想像し、しばらくは飾っておくのだろうなという結論に達した。
そして、しばらく経った頃、背筋を伸ばしてガシガシと使い始めるのだろう。
同じものを手にしても、その物の何処に、どのような価値を感じるのか、人の数だけ答えがあるように思う。
値段なのか、デザインなのか、色なのか、所持することそのものなのか、そこから得られる何かなのか、それを手にすることで得られるステイタスなのか等々。
自分の周りに置いている物を少し離れたところから眺めてみると、気が付いていない自分がそこに居たりするのかもしれない。
そのようなことを思いながら、普段使用しているペン型色鉛筆のダイヤルをカチカチと赤に合わせた日。
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