甘い香りに誘われて、ずらりと並べられたバナナの前で立ち止まった。
バナナを生地にたっぷりと混ぜ込んだパウンドケーキやマフィンを焼いたら、さぞ美味しいことだろう。
皮を剥いて一口サイズにカットしたバナナにレモン果汁を垂らして冷凍した一口シャーベットもありだし、ミキサーの中で牛乳と混ぜ合わせたバナナミルクもいい。
更に、トロトロで甘い焼きバナナも捨てがたいなどと、アイデアは次々に浮かぶけれど、バナナは皮を剥いてそのままカプッと食べるのが一番美味しいという結論に達することもしばしばである。
様々な食べた方で私たちを魅了するバナナだけど、今年の夏、バナナがかかる病気で知られている新パナマ病が南米でも発見されたというニュースを目にした。
偶然目にしたニュースの見出しから、今年は少しバナナの生産量が減るということかと勝手に解釈して記事に目を通したところ、
バナナは、このような病気にかかってしまうと改善することはなく、またその土壌で再びバナナを育てることもできなくなるとあった。
食べることができるバナナの量が減るだけでなく、バナナで生計を立てている方々にとっては死活問題である。
過去にもバナナは、パナマ病によって壊滅的な被害に遭い、絶滅の危機に陥ったという。
この時は、バナナの中にパナマ病に負けない種を見つけることができ、この種を更に品種改良するなどして、人が美味しく食べることができる新種のバナナが誕生したそうだ。
そして私たちが口にしているバナナの大半は、この品種だという。
今回発見されたのは「新パナマ病」と名付けられた新種の病。
しかも、この病にかかったのは私たちが食べているバナナの品種で、バナナは再び絶滅の危機に立たされているということのようだ。
きっと、今もどこかで研究者たちによってパナマ病にも、新パナマ病にも負けない新しいバナナの種探し、品種改良が行われている。
このような病原菌と種族との闘いは、何もバナナに限ったことではないのだろうけれど、そのような背景を微塵も感じさせない、並べられっぷりを前に、バナナにもそのような背景があったのかと、少しだけ驚きもした。
バナナは、様々な努力が重ねられているからこそ、季節を問わず口にすることができているフルーツだったようだ。
そのようなことを知ったばかりの私には、目の前のバナナが普段よりも貴重なフルーツに映り、この日はよそ見することなくバナナをひと房、陳列棚から手に取った。
バナナの存在が消えてしまわないことを願いつつ、美味しく堪能しようと思った日。
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