私は一年を通してキンキンに冷えたものを飲む機会はあまり多くないのだけれど、それでもやはり、秋の訪れと共に少しずつ、ホットドリンクの出番が増えてきているように感じるこの頃である。
その日は、使いきってしまいたいお抹茶が目に入り、牛乳と抹茶、ハチミツを使った抹茶ミルクでひと息つくことにした。
時々、牛乳は嫌いではないけれど温めると一気に飲めなくなると聞くことがある。
牛乳は、加熱することによって牛乳特有の香りが出るため、この香りに反応してしまうように思う。
牛乳の香りは、ある程度の温度までの加熱であれば、コクを感じさせる、ほんのりと甘い状態で留まるけれど、加熱し過ぎてしまうと癖とも感じられる香りも加わってしまうため、
加熱温度をどこでストップさせるかが、飲みやすいホットミルクになるのか、飲みにくいと感じるホットミルクになるのかの分かれ道だ。
例えば、ミルクパンなどを使って直火で温める場合は、弱火で少し時間をかけて温める。
電子レンジであれば牛乳温め専用機能に完全にお任せしてもいいけれど、温めている途中で一度カップの中を混ぜるだけでも、香りや飲みやすさが変わることがある。
つい、短時間でパパッと温めてしまうことも多いけれど、もう少し秋が深まってきたら、キッチンでゆっくりと丁寧にホットミルクを作る、というのも秋らしくていいのではないかと思う。
他にも、牛乳は嫌いではないのだけれど……という前置き付きで登場する話題には、ホットミルクを作るときに現れる「白い膜」も度々あがる。
私は味や食感が苦手ということはないけれど、口にすればしたで口の中を火傷してしまうし、マグカップの縁に付いたら付いたで落ちにくい、といったことがひっかかり、できるだけ白い膜が出来ないように注意を払っている節がある。
しかし、あの白い膜、名をミルクガセインと言い、非常に栄養価が高いものだと言われている。
カゼインというのは、時々耳にする名だけれど、牛乳やチーズなどに含まれるリンタンパクの一種で、神経がピリピリと張りつめている状態を鎮めたり、
摂取するだけでは体内に吸収されにくいカルシウムを、スムースに吸収されるように手助けしてくれたり、免疫力を高めてくれたり、といった嬉しい効果に繋がる栄養素なのだそう。
牛乳を温めたときに水分は蒸発してしまうけれど、それ以外の栄養素がギューッと凝縮した状態があの白い膜、ということのようだ。
私はホットミルクの上に張る白い膜は苦手ではないものの、少々厄介な存在だと思っていることもあり、このような話を聞くまではスプーンで掬い取って捨てていたのだけれど、聞いてしまったので、それからはスプーン掬って出来立てをキッチンでパクリと。
しかし、口の中の火傷と落ちにくさに対する印象は変わらず、ホットミルクを作る際には、出来る限り膜が張らぬよう目を光らせている。
もしもうっかり、ホットミルクに白い膜を作ってしまったときには、お嫌いでなければ、湯葉気分で栄養の塊をパクリと楽しんでみてはいかがでしょうか。
何気ない暮らしのひとコマを楽しむ、何かしらのヒントや閃きにしていただけましたら幸いです。
画像をお借りしています:https://jp.pinterest.com/