幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

あの方々の表情を数値化したらしいです。

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その日は朝から仏像写真を見続けていた。

このようなことを言うと仏像マニアなの?と尋ねられてしまいそうだけれど、仏像マニアというわけではなく、必要に迫られて片っ端から仏像のお顔を眺めていたのである。

仏像と一口に言っても、その表情は様々で、作られた時代の流行りを含んでいたり、作者の作風が少なからず表れていたりと、思っていた以上に見所があった。

しかし、私たちが実際に観光を通して目にする仏像の数は知れている。

一度の観光で仏像をたくさん見ることが出来たとしても、その全ての仏像を目の前にズラリ横一列に並べて鑑賞するような機会はないわけで、そう思うと、仏像の個性を比較しながら眺める機会はそう多くはないのかもしれないと思った。

私は、仏像と聞くと学生時代のクラスメイトを思い出す。

彼は、奈良の興福寺にある国宝、阿修羅像にそっくりの顔立ちをしていたのである。

歴史の授業だったのだろうか、教科書か何かに登場した阿修羅像の写真を見た全員が口々に彼に似ていると言い、興福寺の名と阿修羅像という名は彼とワンセットで皆の記憶に刻まれることとなった。(※阿修羅像は下画像を参照) 

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そして時は過ぎ、一昨年だったか昨年だったか、時期は曖昧なのだけれど、この阿修羅像の話題に触れる機会が訪れた。

阿修羅像には3つの顔が付いているのだけれど、その中央の顔を奈良大学のプロジェクトチームの方々がAI(人工知能)を使って分析したというのだ。

どのような分析なのかというと、人の表情を喜び、怒り、悲しみ、特別な感情を持たない中立などの8種類の感情に分け、仏像の表情が、この8種類の感情のどれに近いのかを測定するというものだ。

数百体の仏像の表情を測定、分析したところ、その多くは特別な感情を持たず、感情の揺れがない中立の表情をしていたという。

しかし、この阿修羅像は一つの表情の中に喜びと悲しみの感情が含まれており、仏像というよりは人に近い表情をした仏像だということが分かったというのだ。

遠い記憶の中のクラスメイトの彼と阿修羅像の顔を似ていると感じた当時の私たちは、感覚を通してこれを感じ取っていたのかと、思わぬタイミングで腑に落ちた話題となった。

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仏像を見て感じる印象が人それぞれなのは、どのような感情にも属さない中立の表情をした仏像に、自分のその時々の感情や心の中を無意識に投影しているようにも思うけれど、「誰かに似ている」と感じる仏像の表情には、このようなカラクリがあるのかもしれない。

そう遠くはない未来、仏像の表情が持つ感情が数値化されたものが説明書きに追記される日がくるのだろうか。

仏像をそのような視点で見てみたい気もするけれど、想像する自由を奪わないでいただきたいと思ったりもする。

秋のお出かけ等で仏像を目にする機会がありました際には、このような視点からお顔を眺めてみるのも一興かと思います。

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