幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

不思議な葉を持つハガキの木。

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この時季、真っ赤な実をつけた植物を度々目にするように思う。

想像するに、野鳥たちにいち早く見つけてもらうための、植物側の作戦なのだろうけれど、柔らかい秋の陽射しに照らされている姿は、スポットライトを浴びたメインキャストのようだ。

その日、目的地へと向かう道すがら目にした真っ赤な実は、幾度か目にしたことがあるものだったけれど、名前を思い出すことができず、君の名は?などと思いつつ通り過ぎた。

帰り道、再び目にしたその木についている立派な葉に気が付き、もしかしたら「ハガキの木」「学問の木」と呼ばれる木ではないかと思った。

葉っぱを一枚いただきたかったけれど、神社の敷地内で育てられている木だったため、葉っぱを千切る失敬は控え、道路側に落ちていた葉を一枚だけ素早く拾い上げて帰った。

その立派な葉から伸びた細い茎の部分を指先で挟んで、葉をクルリ、クルリと回しながら見ていると、間違いなくハガキの木、学問の木と呼ばれる木だと分かった。

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この葉っぱ含まれる成分には、空気に触れると酸化するものが含まれているようで、葉っぱの裏側に鋭利なもの、爪楊枝や針先のようなもので傷をつけるようにして文字を書き記しておくと、その文字が徐々にボールペンで書いたかのように、くっきりと浮かび上がってくるのである。

私たちにとっては、ちょっとした遊びや実験として楽しむことができる「不思議な葉っぱ」という印象が強い植物だけれども、紙が貴重だった頃は、この葉っぱの裏に様々なことを書き記して学んだり、恋文をしたためて想い人へ届けることもあったと言われている。

この辺りの風習が「ハガキの木」「学問の木」と呼ばれる理由なのだろうと思う。

随分と久しぶりに大きな葉っぱの裏に爪楊枝で文字を書いてみたけれど、葉っぱの厚みが予想以上にあり、浮き上がってきた文字は、ボールペンで書いたというよりは鉛筆で書いたような薄っすらとしたものだった。

それでも、メッセージを届けるに足る仕上がりで、先人たちの知恵の多さや身の回りに在るものとの関わり方に感心しきりの時間となった。

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私は「ハガキの木」「学問の木」という名で記憶しているけれど、これは俗名に違いないという思いから、この機会にと、少しだけ調べてみると「多羅葉(たらよう)」という名を持った木であることと、郵便局の木として定められていることなどが分かった。

葉っぱの歴史とハガキの木という異名を持っているのだから、郵便局が黙っているはずはないかと深く納得し、もう一度、平安気分で「いろはにほへと、ちりぬるを」と書き記した葉っぱを手に取った。

既に在るものや身近なものを活かす知恵の数を先人たちと比べると、今の私たちの知恵は随分と減っているのだろうけれど、今の時代は、紙すらも使わずに文(ふみ)を届けているのだと伝えたら、仰け反るくらい驚いてくれるだろうか。

真っ赤な実と多羅葉の葉を見てそのようなことを思った日。

郵便局の中には、敷地内に多羅葉の木を植えている局もあるようなので、見つけることができた際には「ハガキの木」であることをちらりと思い出していただけましたら幸いです。

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