パン屋の陳列棚に、小さめのロールパンやひと口サイズのクロワッサンなどが袋詰めされた状態で並んでいることがある。
たくさん入っているなと感じることもあるけれど、私は、これは1ダースだろうか?と思うことがある。
私たちの常識では「1ダース=12」なのだけれど、パンを主食としている英国では「パン屋の1ダース」という言葉があり、「1ダース=13~15」なのだ。
そのような言葉があることを知らなかった英国暮らし中の私は、「1ダース=12」という常識を胸に、パン屋へ頼まれたパンを買いに行った。
ちょっとしたイベントに使用するパンだったこともあり、言われた数に予備を含めたパンを購入した。
当時購入したパンの数は忘れてしまったけれど、100個必要だと言われたら、8ダースでは足りないので9ダースあればいいのだけれど予備を含めて10ダースといった量のパンを購入したのである。
しかし、私が購入したパン屋の1ダースは15個だったものだから、とんでもない程の量のパンを持ち帰り、パンを待ち構えていた友人、知人たちが一瞬にして、鳩が豆鉄砲を食ったような顔で私を見たという出来事があった。
どんな計算をしたらこうなったのか?
日本人は数字に強いんじゃないの?
シンプルな疑問なのか若干の嫌味も含まれていたのか分からないけれど、全ての質問に真摯に答えた記憶だけが残っている。
このようなことが起こるのは、古からパンがイギリス人にとって大切な主食だったからなのだとか。
パンは焼きあがりによって微量ではあるけれど重量に差が生じるもの。
パン屋が不正をしないよう、販売したパンの重量が定められた重量よりも少なかった場合は、罰せられるという法律が生まれたのだそう。
パン屋は罰せられないように、焼きあがり、その時々の気候や室温、湿度などによって重量が少なくなる場合があることを想定し、重量調整用にパンを1個追加したという。
そして、罰対策だけでなく、お客に対してお得感をアピールにも使っているうちに1ダース=13個個という風習が定着し、パン屋の1ダースは13個になったそうだ。
当時の私は、パン屋の1ダース=13~15個を知らないなんて信じられないという視線を向けられたけれど、後に、世界中を見渡してみるとイギリスのこの風習がマイノリティーだと知った。
色々と感じることはあったけれど、それからはパン屋の方に「こちらの1ダースは何個ですか?」と予め聞くようになっていた。
粗方、大雑把……いや、大らかな店主が営む店が多く1ダース=13から15個だったけれど、この質問も受け取り手によっては、「こちらの職人技術はいかほどかしら?」と受け取り、気を悪くすることもあると耳にし、さり気無く袋の中をカウントするようになったのは言うまでもない。
つい、当時の名残で袋詰めされたパンの中を真剣に眺めてしまうことがあるけれど、ここは日本である。
多分、パン屋の1ダースは12個ではないだろうかと思う。
妙に歯切れが悪いのは、非常に稀ではあるのだけれど、13個入っているものに出会うことがあるからだ。
何かの手違いなのか、イギリスの「パン屋の1ダース」を実践しているお店なのか、答えには辿り着いていないけれど。
袋詰めされたパンを購入する機会がありました際には、こっそりカウントしてみてはいかがでしょうか。
本日も、心穏やかな充実した1日となりますように☆彡
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