知人が、花粉が飛び始めているのではないだろうかと呟いていた。
なんでも、頭や体がだる重く、ぼーっとするという。
花粉の時季かと思いながら、植物たちは相も変わらず、その年の気候がどうであれ、自分がすべきことをすべきときに各々の判断で行っていてブレないなと感心した。
花粉症は体内の花粉タンクが満タンになったときに発症するときくことがある。
実際のところ、そのようなタンクが体内に内蔵されているわけではないのだけれど、人それぞれに許容量のようなものがあるという例えで使われる表現である。
私の花粉タンクも満タンを迎えたのか、数年前に遅咲きではあるけれど “花粉症”なるものを発症した。
ただ、少々マニアックな植物にのみ反応する花粉症とのことで、私が花粉症だと言えるほどの厄介な症状を発症するのは、もう少しだけ先になりそうだ。
とは言うものの、冬仕様から春仕様へとシフトするときにおこる春先特有の体のだるさを、薄々感じ始めたこの頃、体が春の準備を始めたとあれば、ワタクシもしっかりと体のサポートをと外出ついでに買い物をして帰ることにした。
サポートの方法は、先人たちが残してくれた「春には苦みを盛れ」という言葉に倣って、少しずつ苦みを口にすることである。
苦みと言っても、嫌なものを口にするのではなく、大人の味覚である山菜を味わって、楽しむというものだ。
冬眠から目覚めたばかりのクマも、まずはフキノトウを口にして体を目覚めさせるらしいのだけれど、冬に慣れ切った私たちの体をスムースに春仕様へと変える際にも、この方法が効くのだとか。
この辺りのお話は過去にも何度か触れているので、詳細は末尾の関連記事欄から『季節の移り変わりに山菜を食べるワケ。』をのぞいていただくとして、今回スポットライトを当てる苦みは、「花わさび/葉わさび」である。
花わさびとは、あのお刺身に添えられているわさびの花が咲く前の状態で収穫したもので、春を知らせてくれる春告げ野菜のひとつである。
わさびのツンとくる辛味に加えて、葉っぱのシャキシャキとした食感が心地さも好まれている。
わさびが苦手な方は嫌厭してしまう食材だけれども、花わさびは、茹でた傍から辛味や香りが飛んでいくため、お浸しなどにしてしまえば、わさびが苦手だという方でも楽しむことができる食材だ。
わさびのツンとくる辛味が感じられなければわさびじゃないという方の場合には、食べる直前に茹でたり、茹でた後に密封容器に入れておくことで辛さと香りを保つことができる以外にも、
密封容器の中で、好みの出汁醤油に漬けておくと、花わさびをじっくりと味わうことができるように思う。
私はズボラ癖が先に立ってしまうことが多く、出汁醤油漬けにたどり着く前に、お浸しでペロリといただいてしまうのだけれど。
今年は、「花わさび」から春支度を。
そのようなことを思う木の芽どきである。※冬が終わり、植物が芽吹く季節を「木の芽時(このめどき)」といいます。
皆さまも、お好きな山菜で苦みを盛って、春支度をはじめてみてはいかがでしょうか。
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