幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

「もっと力を抜いて毎日を楽しんでごらんよ、 ほらボクのように、ワタシのように。」

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飴色の柔らかな日差しが町の小さなケーキ屋さんの店内を優しく照らしていた。
甘い香りに包まれたそこに並ぶのは、
華やかに飾りつけされたケーキや焼き菓子。
子供でなくとも心躍る空間だ。

 

この日も店内は思い思いのお菓子を求めるお客さんで賑わっていた。
私もじっくりとケーキを眺めながらどれにしようか迷っていると
親子連れのお客さんが横に並んだ。
小さな男の子はケーキのショーケースに吸い寄せられ
そのままピタッと張り付いて目を輝かせている。

ママに、他のお客さんも居るのだからと諭され
ちょっと強引にショーケースから引きはがされるのだけれども
直ぐに身体がショーケースに吸い寄せられてしまう。

 

「(そうだよね、おいしそうだもんね。可愛いな。)」
と思いつつケーキと小さな男の子をちらちらと見ていると
男の子が「ん~?」と声をあげ小首をかしげたのだ。
しばらくして、さっきよりも大きな声で「ん~~?」。
ショーケースのガラス越しに見る彼の顔は真剣そのもの。
どうしたというのだ?!私の好奇心がムクムクと湧き上がる。

 

「ねぇ、ママ。
このケーキ、トマトがのってるね。
作る人、イチゴとまちがっちゃったね。
おしえてあげよっか。
ん~~(店員さんとケーキを交互に見て)
残ったらかわいそうだから、ボクこれにしよっかな」

 

彼の目の前にはイチゴのショートケーキではなく
ほんのりピンク色のトマトのベジ(タブル)ケーキがお行儀よく並んでいた。

優しい子だなぁと思っていると
「ゆうくん、トマト食べられるの?」
「ん~、いつかはね」
ちょっと吹き出しそうになった。
「今日はこっちにする」
彼が選んだのは美味しさてんこ盛りといったビジュアルのプリンアラモード。

 

私を含めた店内のお客さんたちが
彼とママの会話にふんわりとほほ笑んだ。
子供の優しさや発想、心、はなんて柔らかいのだろう。

 

日々出会うもの全てが、出会う瞬間の全てが、
もともと人間に備わっている様々な感情に柔らかく触れて
その反応が瞬時に解き放たれる。
不純物が限りなくゼロに近くて、
きっと一番シンプルな形だ。

 

ついつい、
子供だから、
まだ知らないから、
分からないから、
と不完全な対象として見てしまうことがあるけれど
そのままで十分な存在だ、と思う。
シンプルでナチュラルと言えば良いのだろうか。
経験値という点においては
彼らより長く生きている私たちの方がただ単に経験が在るというだけのことだ。

 

子供は大人がしないような失敗もするけれど、
きっと本能で模索しているのだろう。
どうしたら失敗するのか、
どうしたら上手くできるのか、自分自身の塩梅を知るために。
自分の人生を既に思いっきり生きているのだ。

 

楽しい事や嬉しい事があればずっと同じことを続けているし、笑っているし、
テンションだって高いままだけれど
突然、スイッチが切れたかのように真顔に戻る。
飽きちゃったの?と思うけれど、
あれは、“楽しい”“嬉しい”という感情を味わい切ったということなのだろう。
潔いじゃないか。

 

そういう姿を私たち大人に見せることで
私たちが忘れている事を思いださせてくれたり、
「もっと力を抜いて毎日を楽しんでごらんよ、
ほらボクのように、ワタシのように。」
と伝えてくれているのかもしれない。

 

親子は似ているところがあるけれど、
互いに自分とは違う存在だ。
つい、自分の目線やタイミングで相手を見てしまうけれど
相手にも相手の目線やタイミングが同じように在る。

 

行き詰ったら、まずは深呼吸。
深―く息を吸い込んで
ゆっくり、ふーっと吐き出して。

 

相手が自分と違っても、
自分が相手と違っても、
それでいいのだ。
今日のあなたも、今日の私もそれでいい。
そんな事を思いつつ甘いご褒美に手を伸ばす午後。

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