久しぶりに友人の家へお邪魔することになった。
小さな王子(友人の子供)へのお土産を選ぶも、なかなか決まらない。
彼は、難しいお年頃なのだ。
彼の中で起こるブームは直ぐに過ぎ去ってしまい、目まぐるしく変わっていく。
ん~、こういう時は消えモノに限る。
しかし、ただのお菓子では夢がない。
考えた末、クッキーやチョコレートで作る「お菓子のお家キット」を選び、
お菓子のお家を作るまでの過程をお土産にすることにした。
私は子供の頃から何かを作る事が好きで
女の子でありながらバイクやロボットのプラモデルなんかを喜んで作っていた。
おままごと遊びよりプラモデルという子供。
夢中になる私から少し離れた場所で
「女の子なのに……」という母の小さな呟きを耳で拾ったこともあったが、お構いなし。
ただただ、作る事と仕上がっていく過程が楽しかったのだ。
そんな事を思いだしながらお土産を手に友人宅へ向かった。
玄関へ入るとランチの準備をしてくれている友人に代わって王子がお出迎えだ。
久しぶりに会うと少し恥ずかしいようで勢いよくは絡んでこない。
「こんにちは、元気だった?」
コクリと頷く。
リビングへ行き友人と話していると、
王子が写真を手に私の側に立っている。
「それなあに?」
しゃがんで王子の手元を指さし尋ねると、
待ってましたと言わんばかりの勢いで話始める。
幼稚園であったお遊戯会の時の写真だ。
少し会わないうちに、色々な事が出来るようになっているんだなぁと思って見ていると
私のバッグの横に置いてある「お菓子のお家キット」を指さして、
「なにもってきたの?」と。
お土産だと言って渡すと、パッケージのお家の写真にくぎ付けだ。
「ご飯食べたら一緒に作る?」
私の顔を見ることなく、高速でコクコクッと頷く王子に少し笑った。
お菓子のお家の事を忘れ、
お料理とお酒をゆっくり楽しみながら大人の話に花を咲かせていると背後から
「そろそろ じかん ですよ~」と
可愛い囁き声が聞こえてくるではないか。
大人ふたり、アイコンタクトを交わし、わざと聞こえないふりをしていると、
「はやく こっち こないと ボクひとりではじめちゃうよ~。
いいのかな~ ほんとーに はじめちゃうよ~」
素直じゃないところが、可愛い。
私が折れるしかないじゃないか。
仲良く手を洗って、いざ、お菓子の家づくり。
私は完全に王子の見守り隊員、ヘルプ隊員と化する。
「これさー なかにはいれたら いいのにね」とか
「ママはピンクがすきだから ここはピンクにしよ」とか
「柊希ちゃんのおへやもつくってあげる」とか
それはそれは楽しそうに作っている姿をみて思った。
プロが完璧な形に仕上げてくれているものにも素敵な良さがある。
そして、それらを簡単に手に入れる事もできる幸せな時代だ。
だけれども、モノを作るという時間の中には色々な事が詰まっているのかもしれない。
自分の目標に向かって頑張ることだったり、
出来ない自分を知って、
何度もチャレンジしながら新しい目線や突破口を見つけることだったり、
閃きを信じて行動に移してみることだったり、
誰かの事を想う時間だったり。
五感をフルに働かせる新しい体験の中には目に見えないものが沢山つまっているようだ。
王子の作ったお家はというと、
完成するまで思っていたよりも時間はかかったけれど、ほぼ彼ひとりで作り上げ、
カッコよさの中に愛が感じられるものになった。
満足げな王子と私はジャンプ付きのハイタッチを交わした後、
二人で「テーブル汚してごめんね」と友人(ママ)に誤り、
キレイにテーブルを片付けたのでありました。