幸せのレシピ集

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読書気分で要点だけをつまみ食い|古事記に収められている『こんなやり取りが後世に残ってしまうなんて私なら嫌!』と思う歌ってどんな歌?

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その日はベッドへ潜り込んでからもしばらくの間、

神経がぴりぴりと静かに波打っているようだった。

ベッドサイドに置いてあった古事記(現代訳バージョン)に手を伸ばす。

ぱっと適当に開いたページにあった話を読んで眠ることにしたのだけれど

何度読んでも、

読んでいるこちらが恥ずかしくなるものを引き当ててしまったのだ。

 

仮に私がこの歌を詠んだとして、

いや、絶対に詠まないと自信をもって言えるような内容なのだけれど、

百歩譲って仮に詠んだとしよう。

その歌が後世に残り、

様々な角度から分析され、

解説付きで語り継がれたとしたら……。

死んでも死にきれない程に恥ずかしいと思うだろう。

 

一見堅苦しそうな印象を与える古事記だけれども実はそうではない。

学校で抜粋して取り扱われるような硬い内容の方が少ない、

という事実を知ってからの私は

少々違う目線で楽しむようになった。

あの硬い言い回しは当時の言葉がそうだったというだけ、

そして、それを馬鹿丁寧に訳されているものが多くて

お堅い印象を私たちに植え付けてしまっただけ。

今回は、「え?そんな歌だったの?そんなお話だったの?」

「えー、そんな恥ずかしい歌を残しちゃったの?」

「こんなもの、電車の中で読めないじゃない!古文で良かった」

というような歌の中からひとつ、ご紹介してみたいと思います。

そのような世界を一緒に覗き見してみませんか?

 

お勉強ではないので、

ザックリとお話だけ追いますね。

登場人物は倭建命(やまとたけるのみこと)と、美夜受比売(みやずひめ)です。

名前も覚えるのが大変なので、

男性をヤマト君、女性をミヤズちゃんとでもしておきましょう。

 

このヤマト君とミヤズちゃんはお付き合いをしておりまして、

結婚の約束をしておりました。

ある日、ヤマト君に長期出張命令がでました。

結婚式は長期出張を終えてからということになりました。

ヤマト君は早くミヤズちゃんと結婚したいがために

任務を一生懸命遂行しミヤズちゃんの元へ帰ってきました。

 

ミヤズちゃんもヤマト君が無事に長期出張から帰ってきた事が嬉しくて、

ワクワク、ルンルン♪と

鼻歌混じり(だったかどうかは定かではありませんが)に、

ヤマト君へのご馳走を作り、お酒を用意し、

「お疲れさま」と「おかえりなさい」のおもてなしをしたのです。

 

その久しぶりの再会のお食事中に、

ヤマト君はあることに気づいてしまったのです。

ミヤズちゃんが羽織っていた羽織の裾に血が付いている事を。

そうなのです、ミヤズちゃんはオンナノコの日だったのです。

そして、この事をヤマト君は歌でミヤズちゃんに伝えたのです。

結婚をする相手だとは言え、わざわざ歌で伝えてくるヤマト君。

その時の歌の現代語訳がこれです。

 

「遠いかたなの天の香具山の上を、

やかましく鳴き渡っていく白鳥のように、

ひ弱で細くしなやかな腕を枕にして

あなたと寝ようと思ったのだけれど、

あなたの衣の裾に月が出ているじゃないですか。」

 ※えー、ここへ足を運んでくださっている皆さんは大人レディだと思いますのでヤマト君の発言の一部は皆さんの解釈にお任せして、ここでは敢えてスルーいたします。

 

皆さん、どう思われますか?

ヤマト君は、色々と残念な想いをストレートに言わずに、

オブラートに包んで伝えたつもりでしょうか?

羽織に着いていたオンナノコの日の印(血)を、

女性の月経周期を満月の満ち欠けの周期に掛け、

「お月さまが出ている」と表現して上手く詠んだとでも思っているでしょうか?

こっそり耳打ちしてくれれば、

ミヤズちゃんの失態が後世に知られることもなかっただろうに、と

私は思ってしまうのです。

しかも、この歌は「本邦最古の月経の記録」等と題されて

取り上げられたりもしているのです。

 

しかし、類は友を呼ぶとは良く言ったもので、

ミヤズちゃんも歌を返しているのです。

 

「新しい年が去って、

新しい月も去ればもっともなことですよ。

あなたのことを待ちかねていたので

私の衣の裾にも月が出て当然ですよ。」

 

歌からは、ヤマト君が長期出張だったから

長い間会えず待っていたのだからオンナノコの日にもなるし、

羽織についてしまうことだってあるわよと、

彼女のおおらかさというのでしょうか、

懐の深さというのでしょうか、ミヤズちゃんの余裕が伺えるのです。

この後二人は無事に夫婦になります。

 

今で例えるのなら、

ラインやメールのやり取りが後世に残って、

一般公開されてしまうような感じでしょうか。

このような出来事を真剣に歌でやり取りするなんて滑稽ですし、

突っ込みどころも満載ですが、

当時の人々は様々な事に対して

とてもオープンで、おおらかだったのかもしれませんね。

 

いかがでしたでしょうか?

今回は、教科書では取り上げられないお話の中から、

倭建命(やまとたけるのみこと)と、美夜受比売(みやずひめ)の歌

ご紹介させていただきました。

 

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