初物の中でも割と一般的な「初鰹」の季節ですね。
文明の利器のおかげで年中、旬と変わらぬ味を口にできるのだけれど、
昔はその時期にしか味わうことが出来ない、有難い旬の味覚。
今は年中、旬の味を堪能できるけれど、やはり本来の時期に口にする贅沢さ、有難さは変わらないように思う。
だからこそ、「初物」なんて言われてしまうと、ほんの少し気分が高揚してしまうのは、
私の中にも古の血が流れている証拠なのだろうと思う。
日本人は「初物」という言葉に弱い。
というのも、初物には生気が溢れているので、
初物を食べると寿命が75日のびる、と言われてきたからだろう。
この言葉は江戸時代に死刑の判決が下された罪人に、
死刑執行直前、お役人から最後に食べたいものを尋ねられる習わしがあったのだそう。
罪人は1日でも長く生きていたいため、その時期に手に入れることができない食べ物を答えたのだとか。
お役人も罪人とはいえ、これから命を絶たれる身の者の望みを却下することは出来ず、
その食べ物が手に入る時期まで死刑執行を延期させたそう。
このことから、初物を食べると次の季節がやってくる
75日ほど先までは寿命が延びると言われるようになったのだとか。
この他にも「初物は東を向いて笑いながら食べると福を呼びこむことができる」や、
「八十八夜に摘んだ新茶を飲むと無病息災で長生きできる」などと言われているため、
初物を食べる時には、東を向いて笑いながら食べたり、新茶を贈り合う習慣などが残ってる。
また、日本人は控えめな国民性だけれども意外と新しい物好きでも有名。
これは今に始まったことではない。
初物は旬の走りで季節を先取りすることでもある。
昔から季節を先取りすることを粋だとしてきた日本人の証拠として着物の柄選びがある。
着物を着る時には、少し先の季節の花などの柄を選び、
周りの人に少し早めに次の季節を感じてもらう気遣いという名のおしゃれをしていた。
そして、実際にその花の季節になればメインの座を、その花へ、そっと譲る。
これを粋な振舞いとしてきた。
今でもお洒落な人ほど季節のファッションを先取りするけれど、
これも日本人のDNAの中に組み込まれた「粋」な感性なのではないだろうか。
四季という季節の移り変わりを肌で感じられる環境に身を置いてきたからなのか、
日本の衣食住は季節を感じることと、とても深く繋がっているように思う。
初物を冷静に見てみると、お味にしても、お値段にしても、まだ少し不安定ですよね。
果物は甘みが足りていなかったりすることも多いです。
もう少し待てば両方が安定するにも関わらず「初物」に手が伸びる日本人には、「粋な感性」が備わっているということなのでしょう。
私たちの中に在る粋な感性を感じつつ、あなた好みの初物を楽しんでみてはいかがでしょうか?
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