久しぶりに国産の「ししゃも」が食卓にあがった。
少し前に入手していたものだ。
フライパンにクッキングシートを敷き、風になびく鯉のぼりの如くきれいに並べてじっくりと火を通していく。
他にも準備しなくてはいけない事があるというのに、つい、黄金色に輝いている「ししゃも」に釘付けになってしまう。
少しずつ旨香ばしい香りがキッチンに漂うとき、これから口にする「ししゃも」を想像し、何だか幸せだなと思う。
この「ししゃも」、神様からの贈り物だという言い伝えが存在する事をご存知でしょうか。
所説あるのですが、今回は、私の記憶に残っているアイヌ地方に残るお話を2つ、ご紹介させていただければと思います。
昔々、病気の父親のために、自らは何も食べずに食料を探しまわっていた貧しい家柄の娘がいました。
探し回れど食料が手に入らず途方にくれた娘は川岸に立ち、藁にも縋る思いで神様に祈りを捧げました。
すると、不思議なことに川の側にあった柳の木の葉が次々に川に落ち、魚になって泳ぎ始めたのです。
娘はその魚を獲って家に持ち帰り、病気の父親に食べさせました。
という言い伝えなのですが、親思いの優しい娘の願いを聞き入れた神様が柳の葉を魚に変えたということで、アイヌではこの魚のことを「神の柳葉(シシュハム)」と呼ぶようになりました。
そして、この「シシュハム」という呼び名がなまり「ししゃも」になったと言われています。
この言い伝えから「ししゃも」は漢字で「柳葉魚」と書くのだそうです。
もうひとつは、天に住む雷神の妹が暇をもてあまし、とある川の水源地に降りてきたのだそう。
ところがその辺りは飢饉に見舞われていました。
住人たちは食べる物がなく途方にくれていたのです。
その様子を目の当たりにした雷神の妹は天に向かって助けを求めました。
天の神々はとても驚き、フクロウの女神が魂を背負って地上に舞い降りてきました。
そして、柳の葉に魂を入れて川に流したところ、柳の葉は次々に「ししゃも」になり、人々を飢饉から救ったのだそうです。
アイヌに残っているどの言い伝えも「ししゃも」は神様からの贈り物であるという点が共通しているのです。
実は「ししゃも」、ちょっとしたありがたいエピソードを持ったお魚だったのです。
「ししゃも」は、他の魚と異なり産卵期になっても脂肪や味が落ちず美味しさが保たれる点が特徴です。
そして日本では主に卵を持ったメスの「子持ちししゃも」が珍重されていていますが、産地である釧路近辺やアイスランドやノルウェー、カナダなどの主な産地ではオスの「ししゃも」も好まれているのだそう。
なんでも「子持ちししゃも」と比べると値段も安く、メスの「子持ちししゃも」よりも美味しいと夢中になる方もいるのだとか。
そして、小さくて頭から丸ごとパクパクっと食べることが出来る「ししゃも」。
実はとても栄養バランスに長けたお魚です。
国産ししゃも、輸入ししゃも共に、高たんぱく、高脂肪で、EPA、ビタミンA、B、D、E、カルシウム、亜鉛、鉄分、カリウム、アミノ酸もバランスよく含まれているバランス栄養食品なのです。
中には痛風予防や改善の観点からプリン体を気にされる方もいらっしゃるかと思いますが、プリン体は、私たちが口にしているほとんどの食品に含まれています。
ですから、プリン体を全く摂取せずに過ごすことは、栄養バランスを崩すことに繋がり様々な病気の原因にもなり得るため、不可能に近いと言われています。
専門家の指示が出ている方は専門家の指示を守り、個人的に痛風予防をされている方は
プリン体の多い高プリン体食材を大量に摂らないように気を付けながら、上手に栄養バランスを摂るようにしつつ、バランス栄養食品の「ししゃも」も言い伝えと共に楽しんでくださいませ。
その日の私は「ししゃも」の言い伝えを思い出しながらじっくりと焼いた「ししゃも」をキッチンでパクパクッと摘み食い。
子持ちししゃものプチプチ感に摘み食いの幸せがプラスされ、キッチンがあったか色に染まった。
皆さんもアイヌの言い伝えと共に「ししゃも」を楽しんでみてはいかがでしょうか。
画像出典:https://jp.pinterest.com/
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