随分と前に私が在籍していた仕事場で
一年間ほどお仕事をご一緒させていただいた方から、この時期に封書が届く。
なんとなく、月日の流れをあからさまに感じたくはなくて
何年前だろうというカウントをしないまま届いた封書を開封した。
蛍狩りのお知らせに添えられた、
「今年こそいかがですか?」の短い文面とキッチリと整った書体に、
その方の変わらぬお人柄を見た気がした。
日本の環境が変化し、幻と言われてもおかしくない程に激減した蛍だけれども、
汚れた川をきれいにして蛍が飛ぶ光景を取り戻そうと
各地で地元の方々と行政などによって様々な取り組みが行われています。
その地道な努力のおかげで、今、蛍が舞う景色を見ることが出来る場所が
ひとつ、またひとつと増えているのです。
蛍の成虫期間は1週間~2週間ほどなのだそう。
この間は、童謡「ほたるこい」の歌詞にもあるように、
餌を食べずに、甘い水を求めて草から草へと光を放ちながら飛び回ります。
この蛍たちの幻想的な光景を愛でて楽しむのが「蛍狩り」です。
ホタルの成虫は、腹部後方に発光器があり、発光物質が光ることで光が発生するらしいのですが、
この光は、蛍から蛍へのラブコールなのだそう。
オスは光を発しながら飛び回り運命の相手を探します。
メスは草や木の葉の上で弱く光りながら運命の相手を待ちます。
そして、相手を見つけて両方が強く光れば彼等の恋が成就したしるしなのだそう。
蛍狩りの空間は愛で満ち溢れているのでしょうね。
蛍とひと口に言っても、日本には40種類以上の蛍がいるのだそう。
その中でも知名度の高い蛍は、ゲンジボタル(源氏蛍)とヘイケボタル(平家蛍)ではないでしょうか。
ゲンジボタル(源氏蛍)はその名からも想像できるように、
紫式部の物語『源氏物語』の主人公である光源氏から名付けられたもので、
ヘイケボタル(平家蛍)は後にゲンジボタルの「源氏」と対比で平家(へいけ)の名前が付けられたそうです。
このように、古の時代から愛でられてきた蛍の光景ですが、少し面白いお話もあるのです。
私たちが使っている蛍光灯を光らせるためには電源が必要です。
この電源、東日本は50ヘルツ、西日本は60ヘルツと東西で周波数が異なっており、西日本の方が早いのだそう。
そして、どういうわけだか不思議な事に、これと似たような現象が蛍の世界でも起きているのです。
要は東日本に生息している蛍は4秒間隔で光るそうなのですが、
西日本に生息している蛍は2秒間隔で光るそうなのです。
同じ種の蛍であるにも関わらず生息地によって光のシグナルが異なるという事は、
同じ種であった蛍が分化しつつある過程かもしれないと言う見方もあるそうです。
私は映像や写真では蛍を見たことがあるのですが、まだ実物の蛍を見たことがありません。
その方は私が「いつか本物の蛍を見てみたい」と口にしたことを覚えてくださっていて、
こうして毎年、蛍狩りのお知らせを送ってくださるのです。
皆さんは蛍をご覧になったことがありますか?
私は、なかなかタイミングが合わず夢は叶えていないのですが、
やはり、今でも一度は本物の蛍をこの目で見てみたいと思っています。
愛に満ち溢れた幻想的な世界をこの目で。
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