書斎の窓を開け放ってベランダへ出た。
燦々と輝く太陽から解き放たれたジリッとした陽射しが眩しくて目を細めると、
青々とした草木の匂いが風に乗って私の体を撫でた。
そろそろ、窓際での執筆時にも日焼け止めが必要だ。
そのような事を思っていると目と鼻の先にある小学校から、授業の終わりを付けるチャイムが鳴った。
今のマンションへの入居を決める際、「防音対策は完璧です」と言われたはずなのだけれども、
私の期待が大きすぎたのか、私が求めていた防音対策には程遠く窓を開け放っていようが閉め切っていようが、
小学校のチャイムは土日、祝祭日、長いお休みを除いては、しっかりと耳に届くのだ。
初めの頃は、そのチャイムが少々煩わしくもあったのだけれども
今は自分の作業時間の目安として自由気ままに使わせてもらっている。
皆さんも学生の頃に幾度となく聞いたであろう「キーンコーンカーンコーン」というあの音。
あの音、いや、あのメロディーには歌詞があるということをご存知でしょうか?
実は、『ウェストミンスターの鐘』というタイトルが付けられたイギリスの曲なのです。
※音が出ますので試聴の際は環境にご注意ください。
私がイギリスで生活をしていた時に外出先でこのメロディーを耳にし、
日本では学校のチャイムとして使われていると話すと皆に不思議な顔をされていました。
それもそのはず、タイトルに出てきているウェストミンスターは、
正式にはウェストミンスター宮殿、もしくは英国国会議事堂と呼ばれていて、
皆さんも目にしたことがある「ビッグ・ベン」のことです。
あの建物の名前を「ビッグ・ベン」だと思われている方も多いのですが、
「ビッグ・ベン」はあの建物、時計塔の中にある「鐘の名前」です。
鐘の音で奏でられるメロディーにつけられている英語の歌詞は、
パターンが幾つも在るようなのですが、その多くは、教会でのお祈りの言葉に近いような印象です。
お祈りのメロディーがチャイム?
イギリス人からしてみれば私の発言は、繋げようも、繋がりようもなかったことでしょう。
そして、慣れや習慣とは時に恐ろしいもので、
あの鐘が「キーンコーンカーンコーン」と鳴ると、焦る必要もないというのに、
随分と長い間、街中で「(席につかなくちゃ)」という不思議な気分にさせられたり、
懐かしい記憶が見え隠れしていました。
その場に居るほとんどの人にとってただの時間を知らせる鐘の音が
私にとっては様々な記憶を引き出すスイッチのようなものだなんて、
心身に刻まれた体験や記憶は不思議なものですね。
皆さんは学校のチャイムを聴くと何を思い出しますか?
遠く懐かしい日々へタイムスリップしたりするのでしょうか?
窓から見える学校のチャイムが鳴りましたので、今回のお話はこの辺りでお開きとさせていただきます。
※音が出ますので試聴の際は環境にご注意ください。
画像をお借りしています:https://jp.pinterest.com/