キャンディーキャニスターの中でキラキラと柔らかい光を放つ琥珀色のべっ甲飴を
一粒取り出して口の中へと放り込んだ。
しばらくすると、少しだけ香ばしくて優しい甘みがじんわりと口の中に広がった。
たったこれだけのことなのに、幸せだなと思う。
そして意味もなくキャンディーキャニスターごと手に取って
そのまま窓に透かしてべっ甲飴の中で泳ぐ光を眺めた。
ありふれた日常の中に散りばめられた光を覗くような、探すような、
そのような気持ちになった。
「(いけない、いけない、また脳内トリップしてしまうところだった)」と
調べものを再開すべく植物図鑑へと再び目を向けた。
幾つかの必要な情報を書き出して、書き留めて、ほっと一息。
今度は図鑑の中を泳ぐように、自由気ままにページを捲った。
すると、私の好きなフルーツベスト3に入るグレープフルーツにたどり着いた。
少し目立つような太い字で書かれた学名は「シトラスパラダイス」。
グレープフルーツの爽やかさに甘美さが混ぜ込まれたような学名に、
ぐーっと引き付けられた。
元は、西インド諸島が原産地の果物で、
20世紀頃にはアメリカのカリフォルニアやフロリダで栽培されるようになり、
徐々に世界各地の温かい気候の地域で栽培されるようになったようです。
もちろん日本にも大正時代には伝わってきておりまして
栽培を試みた先人がいらっしゃったようなのですが
日本の気候との相性は良くなかったようで1970年代から輸入によって
私たちが口にできる果物になりました。
グレープフルーツの学名は、
「楽園の樹の実」と呼ばれて大切にされてきたことや、
楽園を想像させるような爽やな香りがすることなどが理由で
シトラスパラダイスと名付けられました。
壮大なイマジネーションから生まれた学名の一方で、
グレープフルーツという呼び名の由来は
ひとつの枝にたくさんの実をつける様子が葡萄のようだという理由や、
葡萄ににた爽やかな香りがするという理由から名付けられたようです。
名付けに関する力の注ぎ具合に若干の差を感じつつ、図鑑をパタリと閉じました。
グレープフルーツはビタミンCやクエン酸が豊富なので、
美容と健康、疲労回復、がん予防などのお役立ちフルーツです。
そして、グレープフルーツにダイエット効果があるということを聞いたことがあるかと思うのですが、
あの渋み、苦みが、脂肪を分解してくれるポリフェノールのひとつです。
召し上がった後の皮は二層スポンジのような役目を果たしてくれますので、
キッチンのシンクをグレープフルーツの皮で撫で上げてから捨ててみるのも、実はおすすめ。
油汚れや水垢が取れる上に、
爽やかな天然アロマの香りに気分があがりますよ。
今は洗剤にグレープフルーツやオレンジの精油が混ぜ込まれているものもありますが、
やはり余計な加工を施していない香りはフレッシュで心地よいものです。
香りと言えば、アロマオイル(精油)にもグレープフルーツがあります。
ボトルから直接香りを試した時には、
渋みや苦みが凝縮されたような、すっきりシャープな印象のオイルなので
ビックリされる方もいらっしゃいますが、
薄めると爽やかな柑橘系の香りで心身がリフレッシュする香りです。
私はイランイランやゼラニウムといった少し癖があるといわれている
お花の香りのオイルとブレンドして双方の香りを和らげて楽しんだりしています。
嬉しい効果を得るための楽しみ方が色々とあるグレープフルーツは、
名実ともに「楽園の樹の実」です。
とても魅力的な楽園の樹の実ですが、少し注意が必要です。
お薬を服用されている方はお薬の種類によっては
お薬との相性が良くない場合もありますので、
必ずお医者様にご確認くださいませ。
久しぶりに、グレープフルーツを欲した私の明日の朝食は、
ジューシーなグレープフルーツの予感です。
暑い夏は知らぬ間に疲れがたまりますし、強い日差しも浴びています。
お嫌いでなければ楽園の樹の実で
心身共にエネルギーチャージしてみてはいかがでしょうか。