先日、お砂糖やバターを一切使わずに焼かれたスコーンをいただいたのですが、
これがとても素朴で味わい深かったのです。
スコーンに使われている素材がしっかりと感じられたのですが、
それだけではなく、添えられたジャムやクロテッドクリームの味も普段以上に存在感があり、
何だかとても不思議な気分でございました。
そして、やはり体にとても優しく負担がかからないのです。
割と大きめのずっしりとしたスコーンだったのですが、
何となく「体に優しい気がする」のではなく、本当に優しいスコーンでした。
贅沢に追及された美味しさももちろん好きなのですが、
このような素朴だけれどもまた違う視点での贅沢な美味しさもまたいいものです。
スコーンはイギリスのスコットランド地方の伝統的なパン菓子です。
18世紀頃には上流階級の習慣であるアフタヌーンティーに既に登場していたようなので
古くから愛されているもののひとつです。
3段になっているケーキスタンドを使ったアフタヌーンティーのスタイルは、
日本でも楽しまれていますが、これが18世紀頃から続いている定番のスタイルです。
目移りするような紅茶のお供が乗せられていますが、
下から上へ順にいただくのがお作法です。
そして、スコーンは2段目に乗せられていると思うのですが、
スコーンはボリュームがありますので食べやすい大きさにカットしますよね。
この時、間違っても真ん中からナイフを入れて縦半分に切り分けてはいけません。
ではどうやって?
スコーンは手にとって上半分と下半分を分けるようなイメージで割ります。
そして、更にひと口大のサイズに割ったらジャムとクロテッドクリームを塗って口へ運びます。
何だかナイフを使わずに手で割る方がお行儀悪く感じてしまいそうになりますが、
これにはスコーンの名前の由来が関係しています。
スコーンという名前は、当時スコットランド宮殿にあった
「The Stone of Scone(運命の石)」という石から名付けられていると言われています。
この運命の石というのは、
歴代の国王の戴冠式で使われる椅子の土台部分(座る部分)に使われている石のことで、
その石の形が当時作られていたスコーンの形に似ていたのだそう。
運命の石と呼ばれるようになったスコーンは、
神聖な形をしているパン菓子という認識が定着したのでしょうね。
神聖な形にナイフを入れたり、
真ん中から切り分けて形を崩すなどもっての外ということで
スコーンは手にとって上半分と下半分を分けるようなイメージで横半分に割る。
というお作法が定着しています。
上流階級層のティータイムにも、
庶民のティータイムにも登場してきた万能なパン菓子、
それがスコーンです。
スコーンを召し上がる機会がありましたら、
本場流のお作法で両手でパカッと上下に割ってお召し上がりくださいませ。
そして、運命の石のエピソードを思い出していただけましたら嬉しいです。