近所に控えめな佇まいの老舗らしい鶏肉専門店がある。
午前中には全ての鶏肉が完売してしまう知る人ぞ知る人気店だ。
完売後はお店を閉めてしまうので午後からしかその場所を通らないという人にとっては、常にシャッター降りっぱなしの不思議なお店として目に映るのではないだろうかと思う。
私もそのお店前を通るのは午後からのことが多いため、盛況っぷりは数えるほどしか目にしたことがない。
先日、午前中からアグレッシブに所用を済ませていた時のこと、何処からともなく漂ってくる香ばしくて懐かしい香りに誘われて歩いていくと、その鶏肉専門店の前へ出た。
お店には数えきれない程の人が並んでおり、「(おぉ、これがこのお店の本来の姿か!)」と思った。
生の鶏肉も扱っているけれど、このお店の目玉は鶏を一羽丸ごと焼いた丸ごとチキン。
ガラス越しに大きなチキンがゆっくりと回転しながら焼かれていく様子は、パリのマルシェで見かけるローストチキンを私に思い出させた。
と同時に、だから懐かしいと感じたのか、と自分の五感のリアクションが腑に落ちた。
画像出典: NO WORRIES PARIS | great Paris walks on and off the beaten path
パリでは日常的にマルシェやスーパー、お肉やさんなどでチキンを丸ごと焼いたローストチキンを買うことができます。
至る所で目にすることができるのでパリの名物と言っても過言ではないでしょう。
シンプルに焼き上げられたチキンはそのままでも美味しいけれど、自宅で少し手を加えるだけで立派なメインに仕上がるので重宝されています。
お値段も大きさによって異なるのですが、1羽が1000円から1500円ほど。
大人4人で食べても一度では食べ切ることができない量なので、豪華さに反してとてもリーズナブルな一品です。
マルシェなどでは部分買いもできる上に、チキンの滴り落ちた油で焼かれたポテトも一緒に購入することができるので、忙しいママやパパたちのお助け時短メニューでもあります。
日本では丸ごとの鶏を購入する機会はそう多くはないけれど、私は食べにくい部分はチキンスープのお出汁と具に使います。
お塩だけで美味しいスープに仕上がるのですが、調味料によって和洋中にアレンジが効きますし、煮込み料理、お鍋のスープ、麺のスープと、楽しみ方無限大です。
モモ部分などの食べやすい部分はメインとしていただき、その他は翌日にサラダやパスタ、サンドウィッチや炒めものなどの具材としても使います。
日本ではクリスマスシーズンに向けて丸ごとローストチキンを目にする機会も増えるかと思いますので、鶏肉がお好きな方で気になられている方はトライしてみてはいかがでしょうか。
ポイントは余計なソースなどを付けたりしていないローストチキンを選ぶこと。
その方が好みのアレンジを加えられて最後まで美味しく楽しむことができます。
そして、お楽しみはお味と華やかさだけではありません。
お子さまがいらっしゃるご家庭では、チキンをさばきながら部位を観察するのも楽しいのではないでしょうか?
スーパーではさばき終えたものが部位ごとにパッケージされて並んでいますが、ささみや手羽先など見慣れた形がどこにどのように在るのか、大人でも目の当たりにするとちょっぴり感動しますよ。
丸ごと美味しくいただこうという感謝の気持ちも自然と湧いてきます。
丸ごとローストチキンを購入する機会がありましたらパリジェンヌ気分で味わってみてはいかがでしょうか。
その時にはお野菜もたっぷり添えて召し上がれ。