甘ずっぱくて香りが心地良いピーチティーを飲みながら、友人から送られてきたカードを眺めていた。
散りばめられた四葉のクローバーに、てんとう虫の赤がアクセントになった可愛らしいカードだった。
ピーチティーをゴクリと流し込んだとき、フランスでの出来事を思い出した。
ある日、知人宅の子どもたちと一緒に塗り絵をすることになった。
「柊希はこれを塗ってね」と渡された1枚は随分とおしゃれ感漂う絵柄で、そのまま額に入れたら、カフェの装飾アイテムになるのではないかと思うようなものだった。
ワクワクしながら色を乗せようとした瞬間、「やっぱりそれは塗っちゃだめ、こっちにして」よくある子どもの心変わりである。
私のワクワクは行き場をなくしたけれど、気を取り直して目の前に差し出された1枚に視線を落とした。
取り換えられた1枚もどこかフランスらしさ漂うキュートなお花畑の絵柄だった。
久しぶりの塗り絵が思いのほか楽しく、よく聞き取れないフランス語は笑顔で聞き流し塗り絵に没頭していた。
すると、私の塗り絵を覗き込んだ子どもたちが、何で?どうして?あー、ほんとだ。と口々に言い出したのだ。
子どもたちの会話の内容を聞きもせず、褒められていたりするのだろうと私が調子にのりかけた、その時。
「どうして赤いてんとう虫しかいないの?」という内容が聞こえた。
正確には単語からそのような会話だと推測できた、という方が正しいのだけれども。
「(ん?赤いてんとう虫だけだなんて、想像力に欠ける。という話か?)」
言葉の真意を見極めようと手を止めて話を聞くと、てんとう虫には黄色いてんとう虫がいるというのだ。
もちろんカラフルなてんとう虫をデザインとして目にすることはあるけれど、実物は赤いてんとう虫しか見たことがなかったため、当時の私は、てんとう虫と言えば赤だと思っていた。
だから子どもたちの話を聞いて、フランスには黄色いてんとう虫がいるのか!と少々興奮した。
私のリアクションが子どもたちの何かを刺激したのだろう。
子どもたちは、図鑑などを持ち出し塗り絵そっちのけで、てんとう虫について話をしてくれた。
フランスでは、てんとう虫は幸せを呼び寄せる虫と言われている。
そして、てんとう虫の中でも黄色いてんとう虫は見かける確率が低いため、赤よりもハッピーだと感じられるのだとか。
それを聞いた私は、一度でいいから黄色いてんとう虫を見てみたいと意気込んでいたのだけれど、目にすることができたのは、この日の出来事をすっかり忘れた頃だった。
日本に黄色いてんとう虫がいるのかどうか定かではないのだけれど、てんとう虫がデザインされたものを目にすると、もうすっかり大人になったであろう、あの時の子どもたちに思いを馳せるのだ。
そして、本当は真っ赤なてんとう虫の方が好みなのだけれど、黄色いてんとう虫を探してみたりなんかして。
黄色いてんとう虫に出会われた際には、近い未来に訪れるハッピーを心待ちにしてみてくださいませ。
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