幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

“SU☆SHI”と歌舞伎と助六と。

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素朴だけれども手間暇かけて作られる海苔巻きといなり寿司。

時々口にすると、ほっと和むのは日本人だからだろうか。

スペインを旅していた時、何だか妙な時間に小腹が空いてしまい

ホテル近くにあった深夜営業中のスーパーへ買い出しに出かけた。

日本食も定着しつつあるのだろう、お弁当や軽食が並ぶ冷蔵ケースには、

SU☆SHIとメタリックな虹色の文字で印字してあるラベルがひと際目立つ助六寿司があった。

日本国内では、どちらかと言えば控えめな彼ら(海苔巻き&いなり寿司)が

異国では夜の照明に照らされて光り輝くパッケージを纏わされているなんて

祖国に居る同士たちは想像すらしないだろう。

空腹も手伝って妙な思考を繰り広げていると「ごめんなさい、これいいかしら」と

スレンダーな美女が横からSU☆SHIへ手を伸ばした。

お夜食にはヘルシーな日本食をということなのだろうか。

これも立派な炭水化物なのだけれど、などと思いながら

残り1つになったSU☆SHIを手に私もレジへ向かった。

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そう言えば、どうしてこの組み合わせを助六と呼ぶのだろうかと疑問に思ったことがあった。

疑問に思ったことさえ忘れてしまっていたのだけれど、

その何気ない疑問は社会人になりたての頃にあっさりと解決した。

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海苔巻きといなり寿司を詰め合わせた寿司折をのことを「助六」と呼ぶようになったのは江戸時代中期だったそう。

当時流行っていた歌舞伎の演目に「助六所縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」というものがあったようなのだけれども、

この演目の通称から取られた名前なのだ。

当時の江戸では贅沢を禁止するようお達しがでていた。

お魚を使った握り寿司も贅沢品とされたことから、

お魚を使わない海苔巻きといなり寿司が親しまれていたという。

どちらとも食べたいという人が多かったのだろう。

海苔巻きといなり寿司の詰め合わせが売られるようになるのだけれど、

江戸の人たちは、いなり寿司に使われている油揚げの「揚げ」と海苔巻き「巻き」を取って

この詰め合わせを「揚巻」と呼ぶようになる。

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巷で「揚巻」と呼ばれた寿司折。

偶然にも同時期に流行っていた歌舞伎演目「助六所縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」の主人公、助六の彼女である花魁の名前「揚巻」と同じだったらしい。

お寿司屋さんたちは海苔巻きといなり寿司を詰めた寿司折の「揚巻」も、

この歌舞伎人気にあやかりたいという気持ちから

「揚巻」と呼ばれていた寿司折に「助六」と名付けたのだという。

 

ホテルに戻り、想像以上にパサパサッとした助六、いや、SU☆SHIを食べながら、

この演目はとても豪快な話で

今もあの市川家の十八番なのだと教えていただいたことも思い出した。※3月に市川海老蔵さんが演じられます。

帰国したら詳しく覗いてみようと思っていたはずなのに、

いつの日か、と思いつつ、あれから随分と年月が経ってしまった。

そして今日は、しっとりとした助六を味わいつつ、再び、「いつの日か」と思うお昼時。

皆さんも助六寿司を召し上がる機会がありましたら、

お寿司のおともに今回のお話をチラリと思い出していただけましたら幸いです。

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