幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

不器用な男の子からの赤いバラ。

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ボランティアでイギリスの小学校へ書道を教えに行っていたことがある。

好奇心旺盛な子どもたちに週に1度、1時間だけ

本物を本来の形で伝えて欲しいという趣旨で依頼を受けた。

だけれども、子どもという存在のやんちゃさは世界共通。

30人ほどのやんちゃ盛りに何かをさせるというのは正直、骨が折れる時間だった。

どんなに時間をかけて準備をしていても思うような時間を組み立てることが出来ず、

帰り道、涙ぐんで随分と弱気なことを思ったこともあったと、これを書きながら思い出した。

私の未熟さも大きかったのだけれども、これでは本物どころか、何も伝えられない。

そのようなことを関係者に漏らしたところ

親睦会を兼ねて子どもたちとBBQをすることになった。

子どもだけではなく、その家族も参加できる一大イベントとなり、

ちょっとしたお祭り気分を味わいながら子どもたちとも随分と打ち解けられた気がした。

 

その時、1人の男の子が母親に手をひかれて私のそばにやってきた。

「ほら、話したいことがあるんでしょ」

そう母親に背中を押されるもモジモジとしていてなかなか口を開かない彼は、

私の授業をいつも混乱させるクラスで一番やんちゃな男の子だった。

「じゃぁ、お母さんが話そうか」

そう母親が言うとそれを制止して彼が話はじめた。

 

「スパゲッティは、むかしは手で食べてたんだ。」

 

私は、突然始まった話に少し困惑しつつも、頷きながら、彼の話に耳を傾けた。

 

「あるスパゲッティ好きの王様がいて毎日スパゲッティを食べてたけど

手で食べる料理はお客さんに出せないでしょ。

だから、家来に今みたいなフォークを作らせたんだ。知ってた?」

 

彼の緊張感が私にも少し伝わり、

知らなかったと少しだけ大げさに驚くと、彼は得意げに続けた。

 

「フォークの歯は3本だと悪魔の尻尾みたいで気味悪いから4本なんだよ。

これも知らなかった?」と。

 

どちらも初耳話だったため素で驚いていると、

料理人をしている父親から教えてもらった話なのだと嬉しそうに話してくれた。

教室で見ていた彼とは違う彼を見ることができて良かったと思っていると

本当に話したいことはそれなの?と母親が私にも聞こえるように彼に耳打ちをした。

すると、

「いつも授業の邪魔をしてごめんなさい。

僕はアートが苦手だから書道もきっと上手くない。

でも、フォークの話を聞いてくれたから僕もやってみるね。」と。

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何て不器用で可愛いのだろうと思っていると、

彼は母親の背中に周り何かを受け取ると

ごめんなさいの印だと言って赤いバラを1輪、私に差し出したのだ。

この歳でこれは反則じゃないかしら、と思ってしまったことを悟られぬよう

私は、飛びっきりの笑顔でバラを受け取った。

あの時、自分が何を伝えたのかももう忘れてしまったけれど、

翌週の授業からは、彼が中心となってくれたおかげもあり、

学校からの帰り道に私が涙ぐむことは無かったように思う。

 

フラワーショップから連れ帰った赤いバラを見ていたら、

そのような出来事を思い出した。

子どもだって大人になったって不器用で素直になれない瞬間はあるけれど、

相手が大人でも子どもでも、男性でも女性でも、

素直に向き合う勇気には未来をほんの少し変える力があるのかもしれない。

最近、意地を張ってしまったなという方、素直じゃなかったなという自覚がある方、

少しだけ勇気を出せたなら胸の奥の緊張がゆるっと解れるかもしれません。

※フォークのお話の詳細はまた機会がありましたら……。

像出典:https://jp.pinterest.com/