世の中にはタイミングと言うものが存在します。
良いタイミングもあれば、
よりによって、どうしてこのタイミングで?というようなことも時に起こります。
先日、後者のような出来事が私の身にふりかかりました。
差し入れにと、とても美味しそうなお饅頭が届いたのです。
私にとって糖分は、適量であれば魔法のアイテム。
しばらく甘いものを控えていたこともあって、
その日はうふふふふと気分が緩やかに上がっていくのを自分でも感じました。
濃い目のお茶を淹れ、食べるための準備だって万端でした。
差し入れてくださった方に「今からいただきます」と
お礼も兼ねて画像とメッセージを送りました。
お饅頭を半分に割ると、しっとりとした厚みのある皮の中から
丁寧に作られたことが分かるこし餡が登場しました。
お饅頭をひと口、口の中に入れたあの瞬間の幸せといったら。
すぐさま「あぁ、美味しい」と体の内側から声がこぼれました。
その時、私のスマートフォンがピコーンとメッセージを受信したことを知らせました。
お饅頭片手にメッセージを覗き込むと、
柊希さん、こういうお話好きでしょ。という言葉と共に、
そこにはお饅頭のエピソードが綴られていました。
このエピソードがティータイムにはどうなのか?という内容で、
冒頭の、「よりによって、どうしてこのタイミングで?」という状況に陥ったわけでございます。
偶然にも、今美味しいお饅頭片手に幸せのレシピ集へ遊びに来てく出さっている方。
申し訳ございませんが、お饅頭を美味しく召し上がった後に
再度お立ち寄りいただくことをおすすめ致します。
そのエピソードというのは、お饅頭がどのようにして生まれたのかというお話でした。
漢字を見ると分かりますがお饅頭は「頭」と関係がある食べ物でした。
場所は中国、時は三国志の時代にまで遡ります。
当時、天才軍師と言われていた諸葛孔明(しょかつこうめい)という人物がいました。
彼が、南方の敵を征伐し自分の生活拠点へ戻るために河を渡ろうとしたのだそう。
ですが、運悪くその土地の河が氾濫し渡ることができなくなりました。
この土地の人々は、河が氾濫するのは河の神様が怒っているからだと信じており、
神様の怒りを鎮める為に、人の頭を切り落として捧げてきたのだそう。
これを聞いた諸葛孔明(しょかつこうめい)は、
河が氾濫する度に人の命が奪われるようなことはあってはならないと言って、
練った小麦粉の中にお肉で作ったあんを詰めた、今で言う“肉まん”のようなものを作らせました。
これを“饅頭”と呼び、人の頭の代わりとして河の神様に捧げたところ河の氾濫は治まったのだとか。
諸葛孔明(しょかつこうめい)は、今後、河の氾濫に対しては人の頭ではなく饅頭を捧げるよう
この土地の人々に命じて軽やかに去っていったそうです。
お饅頭は、このような事をきっかけに食べられるようになり、
中国全土に様々な形で広がり、やがて日本にも渡ってきたとのことでした。
わたくし、皆さんとこのお話をシェアしたく、
出来る限りオブラートに包んだ表現を選ばせていただきました。
しかし、私の元に届いたエピソードはホラー映画のようなタッチの表現だったのです。
もちろん、お饅頭は美味しくいただきまして、
その後、差し入れ主と連絡をとったわけですが、
このタイミングで、このエピソードを、このタッチで届けるのは如何なものかしら?
と愛情を込めて申し上げましたところ、
「あ、本当だ」とエピソードの提供者はケラケラと笑っておりました。
私もつられてケラケラでございます。
やはり、適量の糖分は人をまあるくさせてしまう、魔法のアイテムのようです。
今回のお話は、お饅頭を召し上がりながら、うっかり目の前の方に話してしまわぬようお気をつけくださいませ。
世の中にはタイミングというものが存在いたしますのでね。