幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

初めての瞬間を運んでくれた“みかわやさん”って?

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20メートル程先でご年配の女性が辺りをきょろきょろと見渡している様子が視界に入った。

待ち合わせだろうか、何かお困りだろうか、そう思いつつ歩いていたのだけれど

一向に進みだす気配がないことが気になり通り過ぎる前に声をかけてみた。

すると、「この辺りに“みかわやさん”があると聞いてきたのだけれどご存知?」と尋ねられた。

「……みかわやさん?」

そのような名前のお店、この辺にあったかしら?と思ったのだけれども

ご婦人が手にしていたメモに、

入手困難だと言われているお酒の銘柄が並んでいるのが見え、

みかわやさん、三河屋さん!サザエさんに出てくるあれか!とハッとした。

私は実生活の中で「三河屋さん」という響きを耳にしたことが初めてだったため、

妙に感激してしまったのだ。

 

今では「酒屋」「リカーショップ」などと呼ばれていますが、

「三河屋」は、お酒、お醤油、お酢、お味噌などを扱うお店のこと。

日本史や時代劇などで十組問屋(とくみどんや・とくみどいや)という名に触れたことはありませんか?

これは江戸時代に江戸と大坂間で起こる海上輸送の不正や、

遭難による損害を防ぐという共通の利害関係を考えて組織された組合です。

組合には、江戸の染め物屋、酒屋、綿を扱う店、薬屋などの荷受け問屋が加盟していたのだそう。

当初の組合加盟数が10組だったことから

十組問屋(とくみどんや・とくみどいや)という名が付けられたと言われております。

 

様々な荷受け問屋がありましたが、

その中のひとつにお酒、お醤油、お酢、お味噌などを扱っている問屋があり、

これらを扱う人たちの多くが醸造業が盛んだった三河出身者だったのだそう。

この時代、商いを出身地以外にまで広げた問屋は

出身地を屋号とすることが多かったようなのですが、

お酒、お醤油、お酢、お味噌などを扱う彼らも然り。

各々が「三河」の名を屋号にしたため「三河」の名が庶民の目に留まり、

「三河屋」と呼ばれるようになったようです。

 

ご婦人が探していたそこは、

お酒の品揃えに定評のある酒屋だったため、私はすぐにピンッときた。

と同時に私の言葉センサーがチャンス到来と告げていた。

何のチャンスか?

それは、実生活で「三河屋」と発するチャンス。

初めて使う言葉と言うのは少々照れも生じるけれど、

その照れをおすまし顔で隠しつつ「三河屋さんは、この道を……」と言ってみた。

ワタクシの三河屋デビューの瞬間だ。

いくつになっても初めての瞬間というものは、

程よい緊張感とドキドキに、ほんの少しの照れがトッピングされるようだ。

そのようなことを感じた、ある日の帰り道。

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