先日、泡のたたない粉シャンプーなるものを初めて経験し、
「私は、あわっあわで髪の毛が包まれるあの感触が好きなのだ」
と気が付いた柊希が、最近、密かに楽しんでいる世界をご紹介させていただきたいと思っております。
お時間ありましたら、覗いて行ってくださいませ。
タイトルの通り、本日ご紹介したいのは、
『針聞書(はりききがき)』の中に広がるちょっと不思議な世界です。
『針聞書(はりききがき)』といいますのは、
西暦1568年、戦国時代ですね。
現在の大阪(摂津の国)に住んでいた元行(げんぎょう)さんという方によって書かれた医学書のような本です。
医学書と言いましても西洋医学ではなく、
鍼灸師になるために知っておくべき基本が書かれている東洋医学の本。
鍼の打ち方や、臓器や体内の様子、解剖や鍼、お灸などに関することなどが記されております。
ですが、私が興味を持った内容はこれらの医学的なことではないのです。
陰陽五行説を元にした東洋医学の考え方には、
私たちの体には虫がいて、その虫が厄介事(体の不調や病)をおこすというものがあるのですが、
この書物の中には、その体内に居ると言われている虫の姿や、
虫の退治方法(治療法)が記されているのです。
そして、この虫たちが何とも味のある虫たちで、
まるで絵本を眺めているような気分になってしまうのです。
当時、鍼灸師を目指していた方々は、
この書物を覗き込んで知識欲や想像力を上手に刺激されたことだろうと思います。
少々前置きが長くなってしまいましたが、
『針聞書(はりききがき)』の中に登場する「はらのむし」と呼ばれております虫たちの一部を
ご紹介させていただきたいと思います。
【脾積 ひしゃく】
“脾臓にいる虫。甘い物が好きで、歌を歌う。へそのまわりに針を打つとよい。”
とのことなのですが「歌を歌う」んですって。
聞くことができるものなら、一度聞いてみたいものです。
【肺積 はいしゃく】
“鼻は肺の穴である。善悪の臭いが嫌いで、生臭い香りが好き。辛いものが好き。この虫がいると常に悲しい気持ちになる。針は柔らかく浅く打つとよい。”
【蟯虫 ぎょうちゅう】
“庚申の夜に体より出て閻魔大王にその人の悪事を告げる虫”
【キウカン きうかん】
“肺にいる虫で、食物に向かって起こる。別名を肺カンともいう。虫がこの姿になると病気が治りにくくなる。針の打ち方は色々ある。”
【腰抜けの虫 こしぬけのむし】
“腰にいる虫で、この虫がいると腹を下したり汗が出たり、胸元が苦しくなる。木香(もっこう)・甘草(かんぞう)で退治できる。”
今回ご紹介した虫たちは、ほんの一部で50種を優に超える数の虫たちがいるようです。
こちらは、太宰府天満宮に隣接する九州国立博物館に収蔵されております。
また、このハラノムシのキャラクターに魅せられる方も多いようで、
虫たちの解説本やフィギュアなども密かに人気を集めています。
現存している鍼の書物としては最古のものですので機会がありましたらいかがでしょうか。
今でも「虫の知らせ」「腹の虫がおさまらない」「虫のいどころ」といった言葉がありますが、
ひょっとしたら、私たちは目には見えない虫を体内で飼っているのかもしれませんね。
あなたの体内から虫の声、聞こえたりしませんか?
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