先日、ぽっかりとできたお休みを使ってふらり電車旅を決行した。
目的はひとつ、「美味しい海の幸を食べに行こう。」だ。
一生の中で経験できる食事の回数は限られている。
それならば、その時々に自分が一番食べたいもの、納得できるものを口にしたい、
そう思う私は出かけた先での食事に目星をつけてから予定を組むことが多い。
一番食べたいもの、納得できるものをと言っても毎食高級なものを食べる、
という意味ではなく、その時々の自分が総合的に満足できるものを選びたいと思う。
仮に、その時に一番食べたいものでなかったとしても、
食べる相手やシチュエーションによって満足度が最大限にまで膨らむこともあるのだから
様々な意味も含めて食は疎かにできないと、私自身は思ってしまうのだ。
そのような事を頭の隅にチラつかせながら電車に揺られていた。
まだ少し風が冷たい日だったけれど車窓からの陽射しは温かく、
いつのまにか海と空の青も冬の表情からすっかり春の表情に変わっていることに気が付いた。
海の幸で溢れていると聞いた町に降り立ち、まずは港へ行ってみることにした。
漁船が並び、潮風が鼻を擽り、海鳥が舞う。
青緑色をした海に光が反射する様は水面にたくさんの魚の鱗を並べたようだった。
この土地に住む人たちにとっては慣れ親しんだ景色なのだろうけれど、
私にとって、目の前に広がっていたその景色は非日常的でとても新鮮だった。
それ程、離れた場所ではないのだけれど、
当たり前の風景は、これほどにも違うものなのかと再確認してみたりもして。
その後は、ゆっくりと海の幸を堪能しながら、お喋りにも花を咲かせ、
自宅で楽しむためのお土産を探しながら近辺を散策した。
あるお店で海の幸を買うことにしたのだけれど、
対応してくれた女性がとても素敵な方だったのだ。
きっと20代中頃の方だと思うのだけれども、
最初から最後まで、しっかりと目線を合わせてやり取りをしてくれる女性だった。
私たちの日常は、意外にも言葉と振る舞い頼りになってしまっていたり、
双方のタイミングが合わなかったりで、
気が付けば目と目が合わないままのやり取りを交わしていることも少なくはない。
それが柔らかい笑顔と共に目線が合うものだから、
私自身、彼女の目線にハッとさせられ日常の自分を振り返ってしまった。
短い時間でのやり取りではあったけれど、
彼女に大切なことを気付かせてもらい、温かいやり取りをさせていただいた気がした。
新幹線や飛行機などを使う遠出旅もいいけれど、
近場に在る様々な人々の日常が重なったり、触れ合ったり、すれ違う中を
気ままに散策するのもいいものだ。
まるで日常と非日常のあわいの世界を旅するようで。