ここ数日、アラームが鳴る前に暑さで目が覚める。
カーテンを開ければ、熱を帯びたエネルギッシュな太陽の光が
レース越しに体に染み込んでくるようだ。
梅雨もまだだというのに夏の足音は着々と近づいてきていることを体感する。
我が家は少し早いけれど5月に入ってすぐに冷房のスイッチを入れた。
誰に迷惑をかけるわけでもないのだけれど、
少し早いよね、という胸のざわつきをなだめつつのスイッチ、オン。
たったそれだけのことなのだけれども、
心地良い冷気がさらーっと頬を、体を撫でた瞬間、
その胸のざわつきから解放されたような清々しい気持ちになった。
その日はあまりにも良いお天気だったため、
少し遅めの朝食を済ませ、
仕事前のティータイムをベランダのガーデンテーブルで過ごすことにした。
今は数日前に突入した小満(しょうまん)と呼ばれる期間。
風の中に混じる生命力溢れる草木の香りに
いくつかの懐かしい記憶が引き出されそうにもなりつつ、辺りを見回した。
ん!……んん!?
思わず二度見したのはベランダに放置してあった鉢植えだ。
室内に置いている観葉植物の植え替えの時に余ってしまった土を空いている鉢に入れ、
とりあえず、仮置きしていたものだ。
その鉢植えから5cm、いや10cm弱程の立派な芽がニョッキリと伸びていた。
心当たりのない芽に分かりやすく動揺した私は、
ひとまず鉢植えから目を逸らして手元のライチティーを口に運んだ。
あぁ、美味しい。
敢えて、そう口にだして平常心を装い、空なんぞも仰いでみたけれど
頭の中は、「あれ、何!?何なの?どういうこと?」という声でいっぱいになった。
マグカップにたっぷり入っていたはずのお茶も底をつき、
私は意を決して鉢植えに近づいた。
とても立派な、ネギのような太さの目が青空目がけて伸びている。
指先で軽く押してもビクともしない。
親指と人差し指で芽を摘まんでみると、しっかりとしたハリと瑞々しさを感じる。
それからしばらく、その植物を観察してのだけれど
正体を突き止められぬまま部屋に戻った。
その日から、朝起きるとマグカップ1杯のお水を手にベランダへ出て、
その名前無き植物に1杯のお水をあげることが日課になっている。
私が気づいたその日まで、
水ももらえぬ状態だったにも関わらず立派に芽をだした名前無き植物を前に、
「まさに小満。」そう思った。
花が咲くのか、実がつくのか、ただただ空高く伸び続けるのか、
この先の成長は分からないけれど、そっと見守ってみようと思っている。