一息入れようと席を立ち、キッチンへと向かった。
確かアイスクリームがあったはず。
そう思いながら冷凍庫を覗き込むと、バニラアイスクリームと目が合った。
はやる気持ちを抑えつつ、小さめのデザートボウルとハチミツと「おいり」を準備した。
バニラアイスクリームをデザートボウルに移し、ハチミツをたらりと回しかける。
これだけでもテンションがあがるけれど、その日は、たまたま自宅にあった「おいり」をトッピングすることにした。
私が「おいり」を知ったのは、お仕事をご一緒させていただいた方から、とても縁起の良いお菓子なのだというお話と共に「おいり」を贈っていただいたことがきっかけでした。
ストーリーと共にカラフルで優しい味わいに魅せられて以来、お気に入りで、自分で楽しむこともあるのだけれど、ちょっとした贈り物にすることもある一品です。
「おいり」とは、もち米で作られる「あられ」のようなもので香川県の伝統和菓子。
大きさは直径1センチほどで球状。
口に入れるとサクッと微かな音を立てたそばから溶けていき、お米と蜜の優しい甘さが口の中に広がります。
そして、ほんのりとではありますがニッキのような香りが鼻を抜けていきます。
ポン菓子に例えられることが多いようなのだけれど、中が空洞になっているからでしょうか。
私自身は、薄い和紙で作られた紙風船のように、繊細で軽やかで、ふんわりとした食感が「おいり」の特徴のように感じています。
一見、簡単に作れそうな印象を持ってしまうのだけれども、その作業工程は細かく、もち米を蒸すことから始まり、
蒸し上がったもち米にお砂糖を混ぜて杵でつき、米ぬかを混ぜ合わせてから伸ばして切り、乾燥させるのだそう。
さらに、乾燥したものを窯で炒り、蜜をかけて優しい色をまとわせたら出来上がり。
しかし、この工程には1週間ほどの時間を要するといいます。
この香川県の「おいり」、特に西讃地方から愛媛の東側で作られており、この辺りでは、お嫁入りの道具のひとつとして大切にされているのだそう。
始まりは、400年以上も前のこと。
当時、御姫様のお輿入れがあったそうなのですが、その時に、領内の農民たちが5色のあられを作り、献上したことが、「おいり」が、お嫁入の道具のひとつになった始まりだそうです。
今では「心をまるく持って、まめまめしく働きます」 という意味も込められており、結婚式などで幸せのおすそ分けとして「おいり」が配られることも多いのだといいます。
優しい食感の「おいり」は、ほんのりとした甘みが癖になります。
そのままで食べても美味しいけれど、アイスクリーム、あんみつ、パンケーキ、葛湯などのトッピングにも最適です。
老若男女問わず楽しめるお菓子ですので、機会がありました折には、召し上がってみてはいかがでしょうか。
関連リンク:おいり - Wikipedia
画像をお借りしています:https://jp.pinterest.com/