半年に一度くらいだと思うのだけれども、救急箱の整理をしている。
マメに管理していると言うよりは、
何となく気が向くものだからその流れに逆らわずにいる。という方が正しいだろう。
箱の中身を豪快にひっくり返し、消費期限や使用期限を確認し、不要な物を廃棄する。
物を溜め込むタイプではないものの、中身のほとんどを残したまま廃棄することもある。
そのような時は、少しばかりもったいないと思うこともあるのだけれど、
使い切ることなく元気になれたのだから結果オーライ。
そう思って用意しておいた袋へ笑顔で放り込むことにしている。
今回の救急箱の整理では大量の絆創膏がずらり顔を揃えた。
間違いなく靴擦れを何とかしたくて慌てて購入したのだろう。
その時の状況が分かるような枚数の少ないタイプのものや、
100均で購入したようなものもあれば、
じっくりと時間をかけて吟味したことが分かるような、
絆創膏にしてはちょっとお値段が張るようなもの。
防水に長けたものや、ぱっと見ただけでは絆創膏だと分かり難いスケルトンタイプなど、
とにかく大量の絆創膏があった。
その辺りを走り回っている少年でもあるまいし、
全部の絆創膏を使い切るのはいつの日のことやら。
そう思いながら各種少しずつ引き抜いて、メイクポーチへ忍ばせた。
そう言えば、何かのお仕事をご一緒した皆さんと
提供していただいたお弁当を囲んでいたときのこと。
私の隣にいた女性に、「サビオ持っていませんか?」と小声で尋ねられた。
ん?サビオとは何ぞや?
知らないと恥ずかしい何かなのかしら?
今流行りのアイテムにそのようなネーミングのもの、あったかしら?
一瞬にして私のな脳内は初めて耳にした「サビオ」という言葉で埋め尽くされた。
「あ、ごめんなさい。持ってなくて。」
そう一度は返事をしたものの、知らぬまま答えてしまったことに対する罪悪感が私を動かした。
「あの……、さっきは持っていないと答えてしまったけれどザビオって初めて聞いたので……」
その先を遮るようにして、彼女の更に奥に座っていた男性も、
「あの、私もそれ知りたいです。さっき、聞こえてしまって」と続けた。
すると、女性はハッとした顔で「絆創膏です、絆創膏」と答えた。
「絆創膏!!あ、それなら私、持ってますよ。どれがいいですか?」
絆創膏ショップを開けるくらいバリエーション豊かなそれらをテーブルに広げた。
そこで、北海道ではサビオという名の絆創膏があったことや、
そのサビオという商品名に慣れ親しんだ世代にはサビオでも通じるのだと教えてくれた。
いつの間にか、その場に居合わせた皆を巻き込んで、
他にもカットバン、バンドエイド、リバテープという呼び名が登場し、
絆創膏の呼び方でも出身地が分かるものだと話したことがあったのだ。
随分と前の話を思い出したものだと思いながら、
私は救急箱の整理の手を止めた。
そして、北海道に住む友人に近況報告も兼ねて「サビオ」のことを尋ねてみた。
すると、現在は友人の周りでは絆創膏やカットバンの方が常用されているようで、
「サビオ」を知らない世代もいるとのこと。
こうして少しずつ時代は流れ行くのだな。
そのよなことを感じつつ、救急箱の整理を再開した。