幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

人は、変わりゆくものと変わらぬものの狭間で、その時代を生きている。

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ある日、百人一首に関するお話を伺う機会があった。

その道の専門家と言われている方のお話しを聴く機会はそう多くはないだろうからと、

数日前からワクワクしていた。

しかし、当日の私は、百人一首の内容とは全く関係のないことばかりを脳内に巡らせていた。

目の前に並べられた札に描かれている女性たちを見ていて思ったのだ。

まるでウエディングベールかしらと思うほどに長い髪の毛を引きずりながらの生活は、

さぞかし大変だっただろうに、と。

特に平安時代の女性たちと言えば、

「おすべらかし」と呼ばれる、引きずるほどに長い髪の毛を垂らしたヘアスタイルが主流。

しかも、この長さの髪の毛を艶やかに保つことが美人の条件とまで言われていたというのだから、

時代の声というものは、時に厄介である。

あれだけ髪の毛が長ければ、

頭皮が常に髪の毛の重みで引っ張られ痛みを感じることもあっただろうし、

肩だってこっただろう。

部屋の中や屋敷内を歩く度に髪の毛がモップのような役割を果たし

髪の毛の先はホコリまみれだったのではないだろうか。

今の様に毎日お風呂に入り、シャンプーをすることができる時代ではない。

もちろん、体や髪の毛を清潔に保つためのケアに気を配っていたのだろうけれど、

満足できるようなケアは出来なかったに違いない。

眠るときはどうだっただろうか。

古い書物などの中では枕元に大きな箱を置き、

髪の毛が絡まったり、傷んだりしないように、

その箱の中に入れて眠っていたと記されていたりする。

なんて窮屈な生活だろう。

私なら1日で音をあげるのではないだろうか。

今のようにバッサリと好きに短くしたり、多すぎる髪の毛をすいたりすることができたのなら、

彼女たちは、普段とは異なる軽やかさを感じて歓喜の声を上げたかもしれない。

そう言えば、清少納言ちゃんの書物、春は曙~でお馴染みの枕草子。

その中で彼女は、ある貴婦人のことをこのように言っているのだ。

十二単の一番上に重ねる丈の短い羽織の襟に垢が付いていて、

更に、その部分に白粉、今で言うファンデーションが斑に付いているのが見苦しい、と。

確かに、今の時代であれば身だしなみがなっていない、となるけれど、

当時の生活環境を思えば、致し方ないこともあるのではないだろうかと思ったりもする。

そのような中でのヘアケアやボディーケア。

以前、西洋の女性たちのコルセットについて触れたのだけれども、

どの時代も女性は何かと大変だ。

 

このようなことに思いを巡らせながら1枚の札をじーっと眺めていたのだけれど、

その道の専門家という方に、「その和歌、お好きなんですね」と声をかけられてハッとした。

まさか、和歌の世界ではなく、

当時の女性たちのヘアケア事情に思いを巡らせていましたとは言えず、

慌てて手にしていた札に収められている和歌を目で追った。

人は、どの時代も変わりゆくものと変わらぬものの狭間で、その時代を生きているようだ。

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