この季節、様々な場所で見かけるサルスベリ。
白やピンク、薄紫色に、真っ赤なものまであり、夏の日差しにとてもよく似合う色をしている。
きっと、子どもながらに、この時季の景色に映えると感じたのだろう、
物心ついたときにはサルスベリという植物の名を知っていたように思う。
鮮やかな色に魅せられていると、時折吹く風に枝を撓らせながら揺れるサルスベリ。
小花がぎゅっと集まった状態ごと、ゆさゆさと揺れる様は、
どこか楽しげにも見えて見惚れてしまうことがある。
サルスベリには様々な花言葉があるのだけれど、その中に「雄弁」というものがある。
枝先に小花が集まっている様子が華やかで堂々としているため、
「雄弁」の花言葉が生まれたと言われることもあるのだけれど、
サルスベリの幹は振動を伝えやすい性質のため、
幹を擦ったりして振動を与えると枝先の花がゆさゆさと揺れるのだそう。
この様子が雄弁に語っているようにも見えるという説もあるのだとか。
先日、たまたま通った道で私好みのマゼンタ色をしたサルスベリを見かけた。
揺れる姿を目にし、羨ましいわけではないのに、楽しそうでいいなと相も変わらず思ってしまった。
サルスベリの幹は白っぽく、手触りがとても滑らかでつるつるしているものだから、
猿も滑ってしまう木という理由から「サルスベリ」と名付けられたのだとか。
安直すぎやしないかと思ったりもするのだけれど、
サルスベリの別名、「百日紅(ひゃくじつこう)」という名の背景には、
悲しいラブストーリーが残されていた。
昔、旅の途中だったある国の王子が通りすがりの町の竜神を退治し、
竜神への生贄として捧げられていた娘の命を救ったのだそう。
王子と娘は恋人になったのだけれども、王子は旅の途中だったこともあり、
二人は、100日後の再会を約束します。
しかし、もうすぐ100日を迎えるというタイミングで娘は他界してしまいます。
その後、しばらくしてから娘のお墓から紅色の花が咲く木が生えてきたといいます。
この出来事から、村人たちはこの木を「百日紅(ひゃくじつこう)」と名づけたのだとか。
大切な人をいつまでも身近に感じていたいという人の想いが、
花木に宿るのか、人が無意識に宿してしまうのか、
このようなストーリーは昔も今も変わらず生まれるものなのだなと思う。
このような悲しいラブストーリーによって生まれた
サルスベリの別名、「百日紅(ひゃくじつこう)」なのだけれど、
サルスベリは、初夏から秋までの100日間ほどの長い間楽しむことができる花木であることから
「百日紅(ひゃくじつこう)」と呼ばれていたりもする。
ドラマティックなストーリーを好むか、
ドライなリアルを好むのか、
名付け人によって花木の名も色々、のようだ。
夏から秋の日差しに似合うサルスベリ、
見かけた際にはお好きなストーリーをチラリと思い出していただけましたら幸いです。