窓を開けるとビルの狭間から太陽が昇り始めているところだった。
グレーがかった雲に薄っすらと覆われつつも、その隙間から漏れる光は、
どこか甘やかで優しい朝を運んできてくれたかのようにも見えた。
ガラガラガラッ、と近隣のお宅から勢いよく雨戸を開ける音がした。
その音が、「今日も張り切っていきましょ!」
そう言っているように聞こえるくらい勢いが良かったものだから、
甘やかで優しい朝だと思っていた景色が、
一瞬にして、シャキッと背筋が伸びる景色に変わった。
雨戸は、ガラス戸、ガラス窓の外側に取り付けられている、雨風や寒気を防ぐための戸のこと。
雨戸を取りつけないお宅が増えた時期もあったようだけれども、
雨風や寒気を防ぐだけでなく、防犯効果や防火効果も期待できるとあって、
近年、雨戸を取り付けるお宅やマンションも増えてきているのだとか。
その雨戸は素材が進化し、
形状も、従来の引き戸タイプに加えて、シャッタータイプや折り戸タイプなど豊富な上、
スタイリッシュなデザインのものも増えてきているのだと言う。
我が家はマンション暮らしということもあり雨戸は無いのだけれど、
時々、近隣のお宅から朝、夕に聞こえる
ガラガラガラッという雨戸を開け閉めする音を耳にすると、
太陽と共に、自然と共に過ごしているような気分をお福分けしていただいたような気持ちになることがある。
正直なことを言えば、明け方にベッドに潜り込み、
あと少しで深い眠りにつくかというタイミングでガラガラガラッと聞こえたときばかりは、
複雑な気分にもなるのだけれど。
そのような事を感じているうちに、
そもそも雨戸は毎日開け閉めするものなのだろうか、という疑問に辿りついた。
子どもの頃のことを思い返してみると、
私の実家では台風の時や雨風が強いとき以外は雨戸を使う習慣はなかったように思う。
だから、ガラガラガラッという音は非日常を意識させられる音でもあった。
だけれども、祖父母の家へ行くと、サザエさんのご家庭のように
毎日、雨戸の開け閉めをしていたようにも思う。
周りの友人、知人にも尋ねてみたのだけれど、雨戸に関する認識は様々で、
世代によるものとも、地域性によるものとも言い難く、
雨戸には、各ご家庭の考え方や雨戸に求めている用途が
意外にも強く反映されているものなのではないだろうかという答えに至った。
自分自身が「そういうものだ」、「そうして当たり前だ」と思っていることが
自分以外の人にとって同じだとは限らないけれど、
あまり話題に上ることのない地味な存在だとも言える雨戸だけのことはあって、
思うことも、感じることも十人十色なところが面白い。
皆さんのご自宅では雨戸の開け閉めはどうされていますか。
この機会に、ご自分や周りの雨戸の認識に触れてみるのも良いのではないでしょうか。