ある日、友人の子どもとお喋りをしていたときのこと。
「『てんてこ舞い』と『きりきり舞い』はどっちが好き?」
と不思議な質問を投げかけられた。
答えに困った私は、みかちゃんはどっちが好き?と少しずるい手を使った。
すると彼女は、
「わたしは、てんてこ舞いの方が好き。だって、テンテコ、テンテコってかわいいし、楽しい。」
と間髪を入れず答えながら両手の人差し指を顔の横でゆらゆらと揺らし、
リズムを取るような仕草をして見せた。
いずれも、忙しくて慌ただしい様子を表していて、言葉が持つ意味に大差はないのだけれど、
語源だけは少しだけ異なっている言葉だ。
「てんてこ舞い」の「てん」は、祭囃子などで使用される太鼓の音を表したもので、
この太鼓の音に合わせて舞いながら神輿を先導した女性たちがいた。
彼女たちの舞いを「手古舞(てこまい)」と呼んだそうなのだけれども、
リズミカルで楽し気な太鼓の音に合わせて、
あちらへ、こちらへと移動しながら舞いつつ神輿を先導するのだから、
きっと慌ただしい舞いだったのでしょう。
これらが組み合わさり、「てんてこ舞い」になったという説がある。
一方、「きりきり舞い」の「きりきり」は、コマが高速回転する様子を表したもので、
忙しくて慌ただしい様子を、これに重ね合わせて「きりきり舞い」と呼ぶようになったと言われている。
それにしても、子どもの感性は柔らかくて鋭いことが多い。
語源を調べたようにも、教えてもらったようにも見えなかったけれど、
先人たちの感じたこと、見ていた風景を感性で感じとり、
しかもそれを、「可愛くて楽しい」とサラリと言いきってしまうのだから。
小さなオトモダチの軟らかくて自由なそれを、ほんの少し、羨ましく思ったある日のできごとだ。
画像をお借りしています:https://jp.pinterest.com/