日本語は、ひとつの言葉の中に複数の意味が含まれているだけでなく、
曖昧なニュアンスも多いため、習得することが難しい言語だと言われることがあります。
だけれども、その曖昧さがあるからこそ、
多種多様な気持ちを含ませることができたり、
様々なシチュエーションに対応できたりと、便利な面もありますよね。
例えば、私たちが使う機会が多い「すみません」という言葉。
謝罪や、何かをお願いするとき、感謝を表すときなどに使われますが、
改めて見てみますと、用途の幅広さに気付かれるのではないでしょうか。
そして、この言葉は「すいません」という発音で使われることも多いかと思うのですが、
皆さんは「すみません」と「すいません」、どちらを使っていますか。
使い慣れている言葉にも、適した使いどころというものがあります。
この機会に、「すみません」と「すいません」の使いどころを覗いてみませんか。
会話の中で使うのであれば、
「すみません」を使っても「すいません」を使っても通じますし、間違いではありません。
ただ、「すいません」は、話し言葉の中でもカジュアル度の高い言葉なので、
きれいな言葉を使いたい場合や、
どのような時も、相手が誰であっても、できるだけ失礼のない言葉を使いたい場合などは、
「すみません」を使うと間違いがありません。
そして、メールやお手紙など文章の中で使用する場合には、
「すみません」が正しい言葉の使い方ですので、
会話の癖で、うっかり「すいません」を使わないよう注意が必要な言葉でもあります。
漢字に変換してみると、すんなりと覚えられると思うのですが、
「すみません」は、もともと漢字で「済みません」と書きます。
これは、「すみません」という言葉を使うシチュエーションが、
相手に対して(相手の希望に対して)何かが完了していなかったり、
応えられていなかったり、心残りがある場合に使われているからです。
例えば、頼まれていた用事を何らかの理由で完了させられていない場合の謝罪の「すみません」や、
道を譲っていただいたけれどお礼が完了していなくて申し訳ないという気持ちからくる感謝の「すみません」と言えば、少しイメージしやすくなるでしょうか。
会話で使っている「すいません」を文字に起こしますと、
「吸いません」、「喫いません」……など本来の意味から遠ざかってしまいますので、
「すみません」という言葉が、カジュアルな話言葉として発展してきたことを感じられるのではないでしょうか。
私は、普段の話言葉の癖がメールやお手紙などに出てしまうことは悪いことではないと思っているのですが、
「すみません」や「すいません」は、
ビジネスシーンや目上の方に対して使う言葉ではないことを踏まえた上で、
シチュエーションや相手によって適した言葉選びを楽しんでみるのも大人の醍醐味であるようにも思います。