焼き鳥の“つくね”が好きだ。
初めてのお店で頼んだつくねに卵黄が添えてあったなら、
涼しい顔して、心の中に居るミニチュア柊希が両の腕を上げて飛び跳ねていたりする。
卵黄添えの“つくね”の登場が、人生の先輩方のありがたいお話の最中だったなら、
その話の半分は私の頭を素通りしている。
通り過ぎていく、ありがたいお話の代わりに私の頭の中を占領しかけているのは、
「今宵、この卵黄、いつ割るべきか」だということは、ここだけの話。
焼き鳥メニューの鶏の“つくね”と、鍋に入れる鶏の“つみれ”、
同じ鶏のお団子であるにも関わらず、どうして言い分けられているのだろうか。
ふと、そのような疑問を抱いたことがあった。
「どうしてだろう?」という気持ちと、「そんなこと、どうでもいい」という2つの気持ちが、頭の中を巡った。
結局、自分で考えてみるということはせず、
「どうでもいいことなのだけれど」という前置き付きで、
当時、身近にいた物知り博士に投げかけた。
今回は、そのようなお話を、と思っております。
どうでもいいけれど、どうして?
そのような軽い気持ちで覗いていっていただけましたら幸いです。
“つくね”と“つみれ”は、それぞれの調理方法で言い分けられてきたようでございます。
それぞれの調理方法を知るヒントは、それぞれの語源から。
“つくね”の語源となっているのは「つくねる」という言葉で、
この言葉には、手でこねて丸めるという意味があります。
鶏肉を使おうが、牛肉を使おうが、お魚のすり身を使おうが、使う材料は自由。
これに調味料などを加えて手でこねたものを、丸めるなどして成形したものを“つくね”と呼びます。
手でこねて丸めたものであれば、焼こうが、蒸そうが、揚げようが、煮込もうが“つくね”。
ですから、ハンバーグも“つくね”です。
一方、“つみれ”は「摘み入れる」という言葉が語源なので、
材料を手でこねるところまでは“つくね”と同じですが、
これをきれいに成形するのではなく、手やスプーンなどで摘み取ったものを、お鍋に入れます。
この摘み取って、お鍋に入れる調理方法が、その名になっています。
このように、もともとは調理方法によって呼び分けていたのでしょうけれど、
ハーフメイドタイプのお団子の種類も豊富な今、
その呼び名の使分けは製法よりも雰囲気によるところが大きいような、気も致します。
呼び分けのポイントがあるにも関わらず、きっちりと呼び分けるでも、適当に呼び分けるでもなく、
そのお料理が持つ雰囲気や、
お料理本来の姿を自然に汲み取って呼び分けている日本人ならではの感性。
ものごとによりけりではありますが、
白黒だけでなくグレーゾーンも楽しむことができる大らかさの表れのような気がして、
ワタクシ、この感性が“つくね”よりも、大好きでございます。
寒くなってまいりました。
お鍋に、お好きなお団子をプラスして体も心もポッカポカの夜をお過ごしくださいませ。