今年は秋が短かったと天気予報士たちが口々に言っている。
今年は秋らしいことをやり残してしまったような気がしていたものだから、
短かったような気がしていたけれど、はっきりとそう言ってもらえたことで、
「あぁ、やっぱり」と、気のせいではなかったことに少しだけ安堵した自分がいた。
そして、それならば、と遅ればせながら日常から離れて
冬に追いかけられながら、紅葉狩りのような真似ごとなどもしてみたりした。
いつだって、いつからだって再スタートを切ることができるけれど、
日常の中の小さなやり残したことも“思い立ったが吉日”と捉えて自分のペースでやってみると、
見える景色は、少々変わりはするものの、それはそれで楽しいものだと思った。
本来は、始めるのに早いも遅いもないのだろう。自分が、「それでよし」と思えたのなら。
そのようなことを思いながら、その時に見た、冬のにおいをまとった紅葉を思い出していると
まろやかな陽射しから、また更に夕暮れ時が早くなっていることに気が付いて、
季節が刻々と移り変わっていることを感じさせられた。
冬の空に広がる深い茜色をした夕焼けのことを「冬茜(ふゆあかね)」と呼ぶ。
冬の太陽はあっという間に沈んでしまうため、この時期の夕焼け空は長くない。
沈みながら解き放たれる太陽の輝きが溶け込んだ深い茜色は、
その色の余韻すら残さぬ勢いで、あっという間に夜の青に飲み込まれてしまう。
凛とした冬の冷たい空気に広がるその色は、
色が少ない冬の景色に一瞬だけ力強い花を咲かせるようでもあり、
見た人の心に強い印象を残すように思う。
冬は、夜が長いとよく口にするけれど、実際には明るい昼間が短くなったことで
夜が長いというよりは、1日が短く感じられる季節のようにも思う。
冬の夕陽は切ないけれど、潔く消えゆくからこそ見た人の心を静かに揺さぶるのだろう。
心ふるわされる景色との出会いも良いものです。
冬の晴れた日は、冬茜(ふゆあかね)という贈り物を空から受け取ってみませんか。
関連記事: