しっかりと味がしみ込んだゴボウをキッチンで摘まみ食い。
地味な出で立ちとシャクシャクとした歯ごたえは、癖になる。
摘まみ食いをするその時まで、私の記憶からはすっぽりと抜け落ちていたのだけれど、
高校生の頃に素敵だと思い眺めていたモデルさんがゴボウサラダに凝っていると雑誌で目にしたことがあった。
翌日、ゴボウを大量に買い込んで帰宅した私は、キッチンに立ち大量のゴボウサラダを作ったことを思い出した。
より自分好みのサラダにしようと、その時に試行錯誤したゴボウサラダのレシピは、今の私のゴボウサラダのベースになっている。
小さなキッカケが思わぬ形で未来の自分と繋がっているものである。
ゴボウと言えば、私たちにとっては当たり前のように口にする野菜だけれど、ゴボウを食材として食べるのは日本と極少数の国の人だけだという。
今でこそ野菜としての位置づけのゴボウだけれども、もとは中国から薬の一種として入ってきたものだ。
これを日本人が品種改良し、今のように野菜として食べるようになったのだとか。
海外で過ごしていると時々、無性に日本食を食べたくなることがある。
思うように食材が手に入らないことも手伝ってなのか、日本に居たときには、手に入ることが当たり前すぎて、それ程貴重だと思っていなかったゴボウのような野菜を体が欲するのだ。
当時、私の身体もゴボウを欲したことがあり、驚くような値が付けられていることを承知の上、日本食材を取り扱っているスーパーへ買い求めに行ったことがある。
案の定、この状態のものが、こんなにも高値で取引されているの?あり得ない!
そう思いながら購入したゴボウを丁寧に調理したのである。
日本食材を使った日本食という響きに興味を示した友人たちにも、数品のゴボウ料理を振舞った。
しかし……である。
日本人は木の根を食べるのか?と眉間にシワを寄せ、口に入れた次の瞬間に、そのシワは更に深く彼らの眉間に刻まれた。
それならばとゴボウは地面の下で真っすぐに根を張るため、家がしっかりと根付くと言われていて縁起が良いという話付きで貴重なゴボウをゴボウチップスに仕上げ、友人たちが好みそうな味付けで出してみたのだけれど、これならポテトの方がいいとのリアクション。
あの日は、とびっきり高価で手に入れたゴボウへの残念な扱いに撃沈した、最初で最後の日である。
今は、ヘルシー志向による日本食ブーム。
日本食材が持つ栄養面での情報などが世界でも注目されていることもあり、外国でも知られるようになりつつあるゴボウだけれども、長年のイメージを覆すことは容易ではないようだ。
ゴボウは薬として扱われていたこともあり、魅力的な栄養素をたくさん含んでいる。
その中には、体をめぐる血液の中から悪い血を取り除いてくれる効果を持つものまである。
お正月料理で口にされる機会がありましたら、このお話をちらりと思い出しつつ、
ゴボウの美味しさを噛みしめていただけましたら幸いです。
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