先日、あるカスタマーサービスセンターへ電話を入れた。
込み合っていたようで保留音とメッセージを繰り返し聞きながら順番を待っていた。
不特定多数の人たちからの電話を受けるオペレーターというお仕事も大変だろうなと
想像を膨らませていると私の電話がオペレーターに繋がった。
爽やかかつ絶妙な声のトーンに、私の気持ちがふっと軽くなった。
声というものは、発する人の様々な情報を含んでおり、
電話が繋がった瞬間の声が人に与える印象も想像以上に大きいように思う。
オペレーター女性とのやり取りを続けながら、自分の電話の受け答えを頭の隅で思い返していた。
やり取りも終盤に差し掛かり、私は自宅住所を伝えることとなった。
郵便番号さえ伝えれば、市町村あたりまでは自動で特定できる時代には珍しく、
地名に使われている漢字を一文字ずつ確認させて欲しいと言われた。
以前の仕事では電話を受ける機会も多く、
細かな情報を誰にでもすぐに分かる言葉で、相手に正しく伝える術の必要性を感じる場面があった。
特に地名や駅名、氏名などに使われている漢字は、
本人にとって空気のように馴染んだものであっても、
自分以外の誰かにとっては判別し難いものであったりもするものだ。
そのように感じた経験から、自分の名前や住所を伝えるときや、
相手の名前や住所を電話で教えていただくときなどに正しい漢字で把握できるような
伝え方や聞き取り方をシュミレーションするようになった。
例えば、「上田花子」さんという方の名前を漢字で伝えるときには、
上田の「上」は、上下左右、上段下段の「上」に、田んぼの「田」、
花子の「花」は花火の「花」、花言葉の「花」に、子どもの「子」です、という様に。
もちろん、相手の年齢なども考慮して、その都度使う例えを変えたり、増やしたりしながら。
皆さんは、電話越しの初対面の方に、ストレスや不安を感じさせることなく、
ご自分の住所と名前を正確に伝えたり、
電話越しの相手の住所と名前を正確に聞き取ることはできますか。
日本語による人と人とのやり取りなのだから、
最終的に伝わらなかったというようなことは起こらないのだろうけれど、
お互いにスムースに通じ合えた瞬間や分かり合えた瞬間というのは、
どのようなシチュエーションであっても心地よいもののように思うのです。
お時間ありましたら、「私ならどう伝えるかしら」という視点で、
自分の名前や住所を覗いてみてはいかがでしょうか。
そして、伝え聞き取るシチュエーションに遭遇した際には、
脳内シュミレーションの成果をおすまし顔で披露してくださいませ。
何気ない時間や何気ないやり取りの中に少しだけ、
豊かさや温かさ、そして、ほんの少しの面白さの欠片を見つけられるかもしれません。