ある場所で順番待ちをしていたときのこと。
少し離れたところに置いてあった紙面に「スマホ認知症」という文字があった。
私の順番まで、もうしばらくかかりそうだったこともあり、席を移動してその紙面に手を伸ばした。
こちらでも過去に、「ソーシャルデトックス」や「ファントム・バイブレーション・シンドローム」に触れたことがあったけれど、
今度はスマホ認知症?と、分かりやすいけれど少々ドキリとする、
警鐘を鳴らすには十分すぎるネーミングに、私の目は、ゆっくりと紙面の文字を追っていた。
その内容を簡単に要約すると、
「物忘れ」と言うと高齢者の悩みのように思われているけれど、
近年は若い人たちが、物忘れに悩まさされているという。
彼らに共通しているのは、現代版三種の神器と言っても過言ではない
パソコンやスマートフォンといった電子機器を使う時間が非常に長いのだそう。
それを言ってしまえば世の中の大半の人が当てはまると思うのだけれども、
近年増え始めた物忘れに悩む若い世代というのが40代から50代だと言うから、
パソコンやスマートフォンが生活の一部になり始めた世代で、
ある程度の期間、使用し続けてきた結果が症状として表れだした年代とも言えるのかもしれない。
スマホ認知症の名付け親は、
物忘れに悩む方々を日々診察している脳神経外科の医師とのことだった。
そして、彼の話によると、私たちの脳は、スマートフォンやパソコンから得る情報量が多すぎて、
情報整理に追い付けなくなりつつあるのと同時に
本当に必要な情報を選び出したり、
物事を、じっくりゆっくりと考えることが出来ない脳になっているのだとか。
そこで、脳をニュートラルな状態に戻すために必要なこととして、
とにかく頭を休め、五感を使い感じる時間を増やし、
手書きのメモや手帳を活用するといったアナログなことが薦められていた。
この記事を読んだときに、
きっとスマホ認知症に至るまでには段階があったのだろうと思った。
既に「ソーシャルデトックス」や「ファントム・バイブレーション・シンドローム」という言葉が世の中に生まれている時点で、
少しずつではあるけれど「スマホ認知症」の可能性が多くの人の中に在るということだ。
心も体もキャパシティー以上の情報と常に向き合い続けていれば、
感覚が麻痺してしまうこともあるだろうし、
本来持っている機能が上手く働かなくなることも想像できる。
それらの症状がどの部分に、どの程度現れるのかは人それぞれだろうし、
必要以上に怖がることもないのだろうけれど、生活に欠かせない状態になった時点で
各々が、そのような可能性がゼロではないことを頭の片隅に置いておく時代なのかもしれない。
そのようなことを感じた記事だった。
そして、この話題以上に私が興味を持ったのは、この後の話だ。
スマートフォンの使用時間を把握したり、
ある一定時間、スマートフォンを強制的に使わないデジタルデトックスをするアイテムとして人気が高いものの中には、
それらを一括管理するスマートフォンアプリもあるのだとか。
どのような物事も使い手次第、使い方次第だから、良いとか悪いとかの話ではないのだけれど、
私自身は、便利になってできた、そのスペースに何を入れているのだろうか。
そのようなことを思っていると私の順番がやってきた。
今更手放すことのできないスマートフォンを握り直し、呼ばれた窓口へ向かった。
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