冷蔵庫を開けると開封し忘れていた牛乳の存在に気が付いた。
こんなにも堂々とした場所に在ったというのに、どうして気が付かなかったのだろう。
賞味期限を確認すると、明らかに飲み切ることができない量だったため、
久しぶりに練乳を作ることにした。
出来上がった練乳でフレンチトーストを焼くのもいいけれど、料理の隠し味に使うのもいい。
紅茶に入れてしまおうか、イチゴにタラりと回しかけようか、
カロリーが気になるけれど、バターと混ぜ合わせて厚めのトーストの乗せても美味しいだろうし、
暖かくなってきたことだし、練乳アイスにするのもありだろう。
キッチンで準備を進めながら美味しい想像を膨らませた。
用意するのは牛乳とお砂糖だけ。
我が家で常備している甘味は、甜菜糖、オリゴ糖、和三盆、ハチミツ、時々メイプルシロップも。というラインナップ。
この日は甜菜糖を使って、ほんのりきつね色の練乳を作ることにした。
牛乳を約600mlと甜菜糖を約150gほど鍋に入れて火にかける。
ゆっくりと掻き混ぜながら沸騰するのを待ち、
沸騰したら弱火の状態で30分ほど、掻き混ぜながらに詰めていく。
牛乳の量が半分ほどになったら、
あらかじめ用意しておいた水を張ったボウルに鍋を入れて冷やせば出来上がり。
気持ち緩めに仕上げると、冷やした後も使いやすい。
私が作ると300g前後ほどになるので、よく目にする練乳チューブ2本より少し多いくらい。
練乳の優しい甘さを楽しみながらお腹の調子も整えたい場合は、
お砂糖の量を減らしてオリゴ糖を加えることもある。
また、キャラメルの香ばしさを欲しているときは、
火加減に注意しながら練乳がキャラメル色に変わるまで熱を加える。
使う時に硬くなって使いにくい場合は、レンジで少しずつ加熱するか、
熱湯を加えて溶き直す方法をよく見かけるのだけれど、
私は牛乳を注ぎ足してレンジで軽く過熱して混ぜ合わせる派。
ハンドメイドであれば、自分好みのアレンジを加えられる上に、
作っている時間が、ちょっとした気分転換になったりもする。
随分と前の出来事だけれど、ある食事会で、
どこにでも転がっているような料理の話が話題にあがっていたことがある。
どのような内容だったのかまでは、記憶に残っていないのだけれど、
その中に居らした先輩女性が、こう言った。
無いのなら、あるもので作ってしまうことを楽しんでしまえばいいのよ。
そうすれば作りながら美味しい想像が頭の中に広がって、
思わぬアイデアが浮かぶようなこともあるものよと。
その場に居た一人が先輩女性に問いかけた。
「失敗したらどうするんですか?私は料理が苦手なんです。」と。
すると彼女は、「失敗の何がダメなの?それも楽しい経験じゃない。
私なんて失敗ばかりで上手くはないけど楽しいわよ。それで十分じゃない。」と言って豪快に笑った。
練乳を掻き混ぜながら彼女が解き放ったキラキラとした雰囲気を思い返していたら
鍋から香ばしいと言えるラインを越えかけている香りがした。
ほろ苦さ香る練乳もたまにはいいじゃない。
彼女なら、きっと、そう言って豪快に笑うのかもしれない。
そのようなことを思いながら、鍋をボウルの中の水に浸した。
関連記事: