魚屋さんの前を通ると、肉厚で美味しそうな鮭が並べられているスペースに
「アスタキサンチン」と書かれたポップが揺れていた。
ドラッグストアでもバラエティーショップでもない、その場所で、
「新鮮」でも「美味しい」でもなく「アスタキサンチン」という言葉が揺れていたことに、
斬新、そう思った。
そして、魚屋さんを通り過ぎた後も少しの間、
私の脳内にはアスタキサンチン♪という言葉が即興メロディー付きでループした。
魚屋さんから発信される情報も多様化しているようだ。
アスタキサンチンと言えば、化粧品や各種サプリメントに含まれていることが多いため、
女性の中にはピンとくる方がいらっしゃるかもしれない。
このアスタキサンチンは、自然素材の中に含まれている赤い天然色素のことで、
主に鮭やエビ、カニといった食材に多く含まれている。
この赤い色素を栄養素として大きく仕分けすると、カロテノイドの一種に分類される。
カロテノイドと言えば、人参の赤色色素で知られているβカロテンや、
トマトの赤色色素で知られているリコピンといった栄養素がここに含まれる。
だから、アスタキサンチンも、カロテンやリコピンが得意とする活性酸素を取り除く抗酸化作用、
簡単に言うと、錆びないカラダを作る作用を持っており、その作用を得意としている。
カロテンやリコピンを差し置いて、ここまで単体で注目されているのは、
アスタキサンチンが持つ抗酸化作用が桁外れという研究結果が出たことがきっかけ。
錆びないカラダを作ることが得意だということは、
アンチエイジング効果が期待できるだけでなく、
大人が気にしている動脈硬化予防や、がん予防への効果も期待できるため、
関連化粧品やサプリメントなどに多用されているというわけだ。
そう言えば、鮭は白身魚だと聞いて驚いたことがあった。
確かに赤身か白身かと問われれば、何とも答え難い色をしているけれど、
色が付いており、白ではないという視点から、私は鮭を赤身だと思っていたのだ。
本来鮭は白身魚なのだという。
ただ、産卵のために口にするエサの中のひとつである藻に、
アスタキサンチンがたっぷりと含まれており、それを食べているうちに身が赤く染まるのだそう。
産卵のために川の流れに逆らって上ってくる鮭の体内は、
そのハードな動きから、活性酸素がわんさか発生しているに違いないのだけれど、
多くの鮭が無事に産卵を終えるところを見ると、
アスタキサンチンが鮭の体内の活性酸素を取り除いているからなのかもしれない。
そう言ったのは、知人の栄養士だ。
鮭が、アンチエイジングフードとして取り上げられることが多いのは、
アスタキサンチンをたっぷり含んでいるからなのだけれど、
そのような内容に触れる度に、彼らの生き様あってこその有難い食材なのだと思う。
そして、補足としてもうひとつ。
アスタキサンチンの赤い色素が鮭を赤く染めているため、鮭は白身魚なのだけれど、
そもそも、赤身魚、白身魚という区別は、身の色ではなく、魚の筋肉の色で区別するのだそう。
この話を聞いたとき、正直私は、魚を捌いたとしても、
どの部分を魚の筋肉だと呼べばいいのか分からないと思った。
そこにも、捌かずに見分けることができるポイントが在ったのだけれども、
そのお話はまた機会がありましたら……。
美味しい鮭を召し上がる機会がありましたら、今回のお話をちらりと思い出していただき、
彼らの生き様を丸ごと美味しく受け継いで、細胞を若返らせてくださいませ。