バラエティーショップに入ると手帳レフィルの棚を目指した。
愛用しているバイブルサイズの無地のものと方眼タイプをカゴに入れ、辺りを見回した。
趣味に特化した手帳が並んでいたものだから、サンプルを数冊、手に取ってみた。
愛するペットのことを記すことができる手帳や、
食べ歩きの情報や、日々のファッションコーディネートを記しておく手帳、
デートの内容を細かく記すことができるというディープな秘密手帳など、
興味深いものが多数あった。
以前、バレットジャーナルの話題に触れたことがあるけれど、
ゼロから自分で作り上げるバレットジャーナルではなく、
ハーフメイドのバレットジャーナルといった手帳やノートが増えつつあるのかもしれない。
バレットジャーナルは海外で火が点いたものだけれど、
日本人は、様々な情報を取り入れて、
誰もが使いやすいスタイルにアレンジすることに長けていると思う。
そのようなことを思いながら個性的な手帳の中を覘いていると、ご年配の女性に声をかけられた。
20代のお孫さんへの贈りたいものがあるのだけれど、
これを贈ったら鬱陶しいと思われるだろうか、という話だった。
女性の手には2冊のハードカバータイプのノートが握られており、
私が視線を落とすと「これなの」と、その2冊を私の前に差し出した。
それは、こちらも近年、種類が豊富になってきている冠婚葬祭覚え帳(お付き合い帳と呼ばれることも)だった。
冠婚葬祭覚え帳(お付き合い帳)とは、
結婚祝や出産祝、お香典といった冠婚葬祭時に動いたお金や、
お中元やお歳暮、その他のいただき物や贈った物などを記しておき、
身内や友達だけでなく会社関係の方や、結婚をすればパートナー側のお付き合いなど、
大人になるにつれて増えるお付き合いの中で失礼がないようにするためのノートだ。
そのような物事を書き記しておくだけではなく、
お付き合いに関する基本マナーや豆知識なども書き添えられているタイプのものが多いため、
そこに、新たに覚えたマナーや地域に特化したマナーを書き足すなどして
自分の虎の巻を作り上げていくこともできる。
冠婚葬祭覚え帳(お付き合い帳)は、
このようなものが一家に一冊あれば、
親の代理で子どもが何かをしなくてはいけない場合も、
慌てることなく動くことができることから見直され始めており、
社会人になるタイミングや結婚のタイミングで用意したり、贈られたりすることが多い。
だからだろう。
この時季は、大人のたしなみアイテムとして普段よりも目に付く場所に陳列してある。
その女性は、春から社会人になるお孫さんへの就職祝いに、
贈り物は別途準備しているそうなのだけれども、
大切なことだと思うから、冠婚葬祭覚え帳(お付き合い帳)も添えたいと言った。
私に女性を止める理由はなかったため、
その後、どちらのノートを気に入ってもらえるかという会話を交わして、その場をあとにした。
今年の春も、大きな節目を迎える人たちがたくさんいるのだろう。
冠婚葬祭覚え帳(お付き合い帳)を通して、
随分と遠い日になってしまった社会人1日目に思いを馳せた。
関連記事: