普段使うことがない道を歩いていると、ダイナミックに咲き誇る白木蓮(ハクモクレン)を見つけた。
石垣の上から外側へ伸びた枝にも、
真っ白で、しっかりとした厚みの花びらを持った花が咲き乱れており、
それが立派な木であろうことは容易に想像できた。
その日は天気も良く、雲ひとつない、青く澄んだ空に白木蓮が清々しさを放っており、
歩くスピードを落とした私は、借景と、その妖艶な香りを味わいながらその場を通り過ぎた。
春の訪れを感じさせる春告げ花は、小さくて可憐なものが多いように思うのだけれども、
その白木蓮のダイナミックさは、人の心を半ば強引に揺さぶるような気がしている。
これまでにも何度も白木蓮に触れたことがあるのだけれど、
その日みた白木蓮は花数と蕾の数が桁外れに多く、
美しさの裏側に潜む自然のエネルギーというべきか、自然の脅威と呼ぶべきか、
そのようなものも強く感じさせられたように思う。
人は、美しいものにも、脅威を含むものにも、同じくらい引き寄せられてしまうのかもしれない。
白木蓮の蕾は、蕾と呼ぶには大きすぎる、小鳥ほどの大きさを持った蕾で、
開花すると、その大きさは蕾の頃の3倍ほどにまでなることから、
木に白い鳩がとまっていような木だと言われたりもする。
大きくて、しっかりとした花びらを持っているため、
一見強そうに見える白木蓮だけれども、風が吹けば花びらは散ってしまい、
陽射しや何かの衝撃を受ければ、白い花びらは、すぐに茶色に変色してしまうデリケートな花だ。
美しいままの白木蓮を愛でられる期間はほんの一瞬と言っても良いのかもしれない。
その日の私は、真っ白なそれを存分に味わえたのだから、とてもラッキーだったのだと思う。
木蓮は中国から日本に渡ってきた植物だけれども、
地球上で最古の花木と言われており、1億年以上も前から今のような姿で咲いていたという。
このようなことを見聞きすると、
当たり前のように目にする草木からもロマンを感じることができるということや、
人は自然には敵わないということを再認識させられたりもする。
ダイナミックに咲き誇る白木蓮は、
桜よりも少し早い3月中旬頃からその姿を見ることができます。
白木蓮を目にした際には、今回のお話をちらりと思い出していただき
白木蓮が持つ何かしらを感じていただけましたら幸いです。