中途半端に空いた時間を持て余し、ふらりと寝具売り場を覘いた。
次から次に目に飛び込んでくる春らしい素材や色のベッドカバーや枕カバーは、
私の気持ちを軽やかなものに変えた。
このようなとき、ハッキリと目に見える効果効能ではないけれど、
確かに感じられる、気持ちの変化という感覚が、色の力を教えてくれているように思う。
壁際付近の広範囲を占めている枕に吸寄せられた私は、その種類の豊富さに少々驚いた。
自分に合った寝具を使うことの重要性は、様々なところで見聞きするけれど、
実際のところ私は、「これぞ私にぴったり」そう感じられる寝具には未だ出会えていない。
可もなく不可もなく自分にとって無難なものを使っている。
時々、買い替える枕も、使い始めは感動するようなこともあるのだけれど、
次第に可もなく不可もなくという、いつものゴールに辿り着く。
結局のところ、日々の自分のコンディションによっても合う枕、合わない枕があり、
これさえ持っていれば“無問題”というような万能枕など存在しないのではないだろうか、
そのような捻くれたことを思ってしまうこともある。
寝具売り場で“最近の枕”を眺めていると、店員が声をかけてきた。
何気ない会話を交わす中で私は、
その捻くれた思いをオブラートに包みまくった状態で伝えてみた。
すると、店員は人の数だけ枕の正解もあるので、
できることならオーダーメイドの枕を使うのが好ましいと言い、
そのオーダーメイドの枕も、小まめに見直すことで、より快適な睡眠ライフをおくれるのだと言った。
当たらずとも遠からずだった自分の思いに対して
“捻くれた”という冠は不要だったのかと思いながら
一般的な枕以外にも豊富な品揃えで目立っていた抱き枕に視線を向けた。
心理学の視点では、人は柔らかいものにしがみついたり、触れたり、包み込まれたりすることで
リラックス効果を得ることができると言われているため、抱き枕にも、その効果があるように思う。
また、寝具によって得られる効果としては、
日常生活で負担がかかり、腰痛や浮腫みなどの症状が出ている個所を抱き枕でサポートすることで、
より快適な睡眠を摂ることができ疲労回復に繋がるのだそう。
寝具売場の方の話によると、自分が心地よいと感じるタオルケットや
薄手のキルティング風掛け布団を丸めたものを抱き枕に見立てて試してみるのも良いとのこと。
季節の変わり目による様々な影響が心身に表れて、
何となくスッキリとしないと感じられている方は、
抱き枕によって思わぬ効果を得られることもあるのではないだろうか。
待ち合わせの時間が近づいたため、
様々なことを教えていただいた店員にお礼を伝えその場を後にした。
いつの日か、私にも「これぞ私にぴったり」と感じられる枕が現れてくれることを願いつつ、
今夜も、それなりに満足しているベッドに潜り込むのであろう。
寝具選びは、一筋縄ではいかない奥深い世界だ。
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