様々なものに付いてくる取り扱い説明書(以下、取説)を保存しているファイルがある。
いつの間にかパンパンに膨らんでしまったファイルを開く度に、
全てをデータ化して保存したいと思うけれど、今のことろ、手付かずのままである。
先日、そこに新たに1冊の取説を加えたのだけれど、
本来の姿を無くしかけているファイルを不憫に思い、取説の仕分け作業をした。
その中に、馴染みのお布団屋さんから送られてきた布団便りなるものが紛れていた。
作業を中断し、その便りに目を通してみると、寝具の歴史のようなものが綴られていた。
そこには、日本人は弥生時代からベッドのようなもので寝ていたとあった。
もちろん、私たちが知っているような作りのものではないのだけれど、
丸太で作られた、今で言うところの「ベッド」を使っていたのだそう。
その上に、藁や稲などを編んで作った敷き布団を敷き、
掛け布団には、就寝時用の「ふすま」と呼ばれる着物を使っていたとあった。
奈良時代に入ると「畳」が登場するのだけれど、
平安貴族たちは、丸太ではなく、この「畳」を数枚重ねて高さを出した
「八重畳(やえだたみ)」と呼ばれるものを敷き布団兼、ベッドとして使用し、
庶民や農民たちは、土間に敷物を敷いたり積んだ藁に潜るなどして寝ていたのだそう。
戦国時代に入ると木綿が使われるようになり、
今の私たちが知る布団の原型に近い、綿を詰めた敷布団や、
掛け布団変わりになる綿を詰めたような着物が登場したという。
もちろん、使う布団の厚みは、立場や階級による差はあったようだけれども、
人々は、布団の虜になったようだ。
その後は、布製のものだけではなく藁を和紙で包んだ布団も登場するなど、
日本人は大昔から試行錯誤し、快眠に拘ってきたようなのだ。
私は、これまで布団の歴史を覘いてみようと思ったことは無かったのだけれども、
誰もが、全身を優しく包み込んでくれる布団で眠ることができるようになったのは、
思っていたよりも最近のことで、先人たちが繋いできた探求心のお陰さまだと、この時知った。
今の私たちが手にしている生活は、先人たちの一歩の上に成り立っている。
そして、私たちは、使うことで次へと繋いでいるのかもしれない。
取説の仕分けは思う様に進まなかったけれど、
今夜は、干したばかりのふかふかのお布団の中で、
暮らしの中にある小さなシアワセを噛み締めたいと思った。
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