お洗濯が終わった衣類をたたみながら思い出したことがある。
それは、「お洗濯をして干した衣類は、一度たたんでから着用しなくてはいけない」という風習だ。
様々な出身地の方と、この話題で話したことがあるけれど、
そのように言われて育ったという方もいれば、初めて聞いたという方もいるところを見ると、
全国共通という訳ではないのかもしれないとも感じている。
そして、ライフスタイルや家屋内のデザインも多様化している昨今、
この風習がどれほど残っているのか、受け継がれているのか、
小さな子どもたちにはどのように説明されているのだろうかと素朴な疑問を抱いた。
風習、言い伝え、迷信、そうしなくては縁起が悪いなど、表現方法は様々なのだけれど、
「お洗濯をして干した衣類は、一度たたんでから着用しなくていけない」というものだ。
そうしなくてはいけないと言われている理由は地域によって多少異なるのだけれど、
全てが「死」に結び付けられている。
そのひとつは、亡くなった方に着せる死装束は、一度洗って畳まずに着せるもの、
もしくは、仕立て上がったものを一度もたたまずに着せるものであるため、
生きている人が、それと同じことをするのは縁起が悪いというものだ。
古の時代のライフスタイルや葬儀の段取りによって生まれたものであるのと同時に、
お洗濯をして乾いた衣類を一度もたたまずに着るような、
だらしない生活をしないようにという躾の一環でもあったのでしょうけれど、
今の時代は、たたみ皺が付かないようにハンガーにかけて吊るした状態で保管することも多く、
そのような収納方法を推奨する衣類や収納スペースも増えている現実がある。
そして、そのような環境下で保管している衣類も、
着用前には一度軽く畳み、それを広げてから着用する習慣もあるけれど、
実際のところ、それはどの程度受け継がれているのだろうかと思った。
私の場合は、たたむ必要があるものは、たたんで収納しているため、
自然と“一度たたんでから着用する”という条件を満たしているけれど、
例えば、ハンガーにかけて吊るしているトレンチコートやジャケット、その他の場合は、
“着用直前に一度軽くたたみ、それを広げて着る”というひと手間はかけていない。
「たたむべき衣類」と「たたまなくて良い衣類」の見分け方まで伝授される現代では、
子どもたちに、どのようにして伝えるかという所がポイントのように思う。
伝える側が、この場合は大人が、
時代を経てきた風習の背景を理解し、その部分も含めて伝えることで、
伝えられた側は、「これまで」と「今」を大切にした上で改めて考え、
更なる未来へ受け継いでいくことができるように思うのだけれども、いかがでしょうか。
伝える責任、伝え方の責任、大人も大変でございます。
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