起床を知らせる目覚まし音がベッドルームに響いた。
出来るだけ穏やかに起きられるようにと“鳥のさえずり”を選んでみたのだけれど、
朝に弱い私にとってその音は、“鳥のさえずり”と呼べるほど穏やかなものではなく、
心地より眠りから私を強引に引きずり出す少々厄介な目覚まし音である。
しかし、その日の朝は、その厄介な音に助けられ目が覚めた。
と言うのは、明け方に見始めた夢は、私の感情を激しく揺さぶりえぐるようなものだった。
私は夢の中で、それが夢だと気が付いたのだけれども、
上手く目覚めることができずにあたふたしていた。
そこに、穏やかな鳥のさえずりが響き渡り、無事に目覚めることができたという朝。
このような日の朝は、全身が強張っていた余韻で気怠く、頭もスッキリとしない。
朝食の支度をしながらレモン水やハーブティーを飲みつつ、
精神的なもの?疲労?最近観たり読んだりした何かの影響かしら?などと考えていた。
そして、食材を取り出そうと冷蔵庫を開けた瞬間、奇妙な夢の引き金を引いた正体を目視し、
やってしまった……、また負けた……と思った。
イギリスにはこのような迷信がある。
就寝する30分前にチーズを食べると奇妙な夢を見るというもの。
英国チーズ委員会なる組織から、そのような実験結果が発表されており、
食後にチーズを食べる習慣があるイギリスでは、チーズにまつわる常識のように扱われている。
しかし、原因の解明などは不十分であるため、迷信のような位置づけでもある。
ただ、体質によって感じ方に差はあるのもの、
チーズに含まれているチラミンが脳を刺激し頭痛を引き起こすことがあることを考えると、
含まれている成分の中に脳を刺激するものが含まれているのではないか?という見方もあるという。
原因の解明などは現段階では不十分であるという前置きありきではあるのだけれど、
イギリスで食されているブルーチーズ、スティルトンチーズは、奇妙な夢を見やすいと言われており、
レッドチェダーチーズは懐かしい夢を見やすいといった、チーズごとに夢の系統があると言う。
解明されていないモノゴトは世の中に山のようにあるわけで、
個人的には、このような視点や話題もチーズの楽しみ方のひとつだ、とも思っている。
というところで、冒頭の話に戻るのだけれども、
ワタクシ、ブルーチーズの中でのスティルトンチーズが好きで、時々購入している。
寝る30分前にチーズを口にすることは無いため、
スティルトンチーズの影響を受けることは無いと思っているのだけれど、
それでも、夕食時に少し多めにスティルトンチーズを楽しんだ夜などは、
奇妙な夢を見ることが時々、あるように感じている。
これが、チーズによるものなのか、
私の記憶の隅に眠っているチーズの話を無意識に意識した結果によるものなのか、
日常の中にある何かが偶然にも、そのタイミングで反映されたものなのか、
その答えは分からないけれど、スティルトンチーズと奇妙な夢がリンクした日は、
チーズに負けたような気分を楽しんでいたりする。
チーズを召し上がる機会がありましたら、話のネタに、翌朝のお楽しみに、いかがでしょうか。
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