観葉植物に与える活力剤というものがある。
活力剤は肥料ではなく、人間でいう所の栄養ドリンクのような位置付けのもので、
アンプルタイプの先端をカットしたものを土に突き挿しておけば、
必要な時に必要な量を観葉植物が吸い込んでくれるというものだ。
暖かくなり、水やりの回数も若干増え、瑞々しい葉っぱも芽吹いてきたため、
この辺りで活力剤でも差し入れておこうかしら、そう思ったのだ。
いつの間にか、両手で抱えて移動させるのも大変なほどの大きさにまで成長したそれの
生い茂る葉をかき分けて土の表面を覗き込むと、
前回差し入れたはずの活力剤が丸々一本残されていた。
必要なかったのだろうかと不思議に思い、そのアンプルを引き抜くと、
先端のカットが僅かに足りず、封が切れていない状態で挿されていたことが分かった。
数か月以上もの間、お預け状態だったことを詫びる気持ちと共に活力剤を差し入れると、
観葉植物は、見事な吸い込みっぷりを披露してくれた。
その後、瞬間接着剤を使用しようとしたのだけれど、
接着剤が出る先端が固まっていたため、先端をハサミでカットすることにした。
アンプルの件があったからだと思うのだ。
先端を思い切って、気持ち深めにカットした……が、今度はカットし過ぎてしまったのだろう。
接着剤が小さなチューブの中から生き物のような動きで溢れ出した。
それを素手で受け止めた私の手のひらは、一瞬にして、日照りが続いた地面のような姿で固まった。
直ぐに、購入しておいた剥がし液というものを使って接着剤を落としていたのだけれど、
これほどの威力があれば戦地でも、さぞかし効果を発揮したであろうと思った。
この瞬間接着剤は、もともと、戦地で負傷した兵隊の縫えないような傷を塞ぐための、
医療用応急処置アイテムとして海外で開発されたものだと言う。
これが、医療現場のアイテムに留まらず、
工業用(家庭用)としての改良も重ねられ現在に至っているのだそう。
日本の瞬間接着剤にも、医療用、工業用(家庭用)があるようなのだけれど、
私たちが気軽に購入できる工業用(家庭用)瞬間接着剤は、基本、医療目的に使用することはできない。
手にこぼしてしまった工業用(家庭用)瞬間接着剤の威力を肌で感じたことがあれば、
傷も簡単に塞いでしまえる気がするのだけれど、
傷口だけではなく、傷口に在る目には見えない雑菌までもを、体内に封じ込めてしまうことになるため、
緊急時に傷を塞ぐために工業用(家庭用)を使う際は、
出来る限り医療従事者の指示や判断に委ねた方が良いのだそう。
一瞬でピタッとくっつけてしまう、魔法のような接着剤は、まさかの医療畑生まれなのだ。
そう話してくれたのは、ホームセンターにいたスタッフの青年。
過去にも今回と同じように手のひらに瞬間接着剤をこぼした私は、
見るも無残な手のひらを引っ提げてホームセンターへ駆け込んだ。
この状態を手っ取り早く戻すために何を買えばいいのか問う私に、
剥がし液を吟味しながら、話してくれたのだ。
「これで直ぐに落とせると思います」と言って差し出された剥がし液に、再び、お世話になるとは。
アンプルタイプに用心、用心。そう心にしっかりと刻んでおこうと思った。
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