ベランダにやってきたスズメたちがお喋りをしている。
その場が、陽気な空気のもとでのお喋りだったかどうかは分からないけれど、
そうであって欲しいと無意識に思う私の気持ちが、
その光景を陽気なお喋りをしているように見せたのかもしれない。
スズメたちの声は、とても弾んでいるように聞こえた。
その日は、ガーデンテーブルをスズメたちに譲り、私は室内から彼らを眺めつつ、ひと息ついていた。
つい最近まで、ふっくらとしていたように思うけれど、
衣替えを済ませたのか、子育てに追われているからなのか、スリムになったように見えた。
どの姿も可愛いのだけれど、私は特に、冬のすずめがお気に入りだ。
体中の羽根に、たっぷりと空気を含ませて、体を丸く膨らませているあの姿。
寒い冬を乗り切るための彼らの知恵であり、
人間から可愛いく見えるかどうかなど考えもしないのだろうけれど、
目にしたこちらまで体が温かくなるような気がするのだ。
この、丸く膨らんだスズメは「福来雀(ふくらすずめ)」と呼ばれており、
幸多き人生となるようにといった願いや祝福の意味が込められた縁起物とされている。
「福来雀(ふくらすずめ)」は、丸く膨らんだスズメが羽を広げている様子を正面からデザインに起こしたもので、
着物や帯、風呂敷などの和小物の柄に使われていたり、
華やかで可愛らしい帯の結び方として親しまれ続けている。
以前、ここ十年くらいの間に、スズメたちがツバメの巣を乗っ取り、
子育てをするようになっているという話題に触れたのだけれど、
やはり、野鳥たちの住宅事情は私たちが思う以上に切羽詰まっているのだろう。
スズメは、世界中で生息が確認できる野鳥だけれども、
日本のスズメは、年々数が減っているそうで、近い将来、絶滅するのではと見られているという。
減少の原因には、野生の鳥や動物といった敵に狙われる機会が増えたこともあるのだけれど、1番の敵は人間。
スズメは、野生の鳥や動物といった敵から身を守るために、
人間の近くで子育てをするのだけれど、その人間から駆除されることが多いのだ。
もちろん、そのような状況を招いた原因も、
人間の手によって、彼らの寝床が奪われたことが発端となっている。
最近、そのような話を幾度か見聞きした。
そして、世の中にあるモノゴトは、
大なり小なり影響し合っていることを改めて認識させられたような気がした。
10年後も、福来雀(ふくらすずめ)の愛らしさを眺めながら、
ほっとひと息つける世の中であって欲しいと、ぼんやりと思った。
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